未知なるマリアージュの世界へようこそ!

私の超オススメワインをご紹介します🥂🍷✨

🍷〝エチケット〟は体(たい)をあらわす

エチケットは重要です。エチケットとはワインの〝ラベル〟のことですが、村名や品種名、ヴィンテージなどの基本情報が記載されています。ときには、エチケットから造り手の想いやセンスなども読み取れることもあります。そのため、めずらしいエチケットを見かけると、つい手に取ってしまう自分がいます。

 

今回は、愛くるしい色調で描かれた《サヴィニレ・ボーヌ 2014》のエチケットに一目惚れ…。造り手であるメゾン・シャンピーは、1720年創業のボーヌ最古のメゾンです。モダンで洗練されたエチケットの採用は、現在のオーナーであるピエール・ムルジェイ氏の監修によるものだそうです。センスが光っています。

 

このワインは自然に配慮した、認定オーガニックワインラズベリーブラックベリーに、丁子とシナモンをいれてリキュールを作ったような風味が、よりフレッシュさを引き立てます。酸と甘みのバランスに優れ、タンニン(渋み)はこのうえなくやさしい質感。フォアグラのソテーを合わせると、フォアグラの旨みと苦みが、深みあるベリーの果実感と〝呼応〟して、まるでベリーのソースのように、一体感を醸成するのです。

 

名は体をあらわすといわれますが、エチケットも体をあらわすこともあります。チャーミングなエチケットは、やはりチャーミングなテイストでした。インスピレーションで選ぶこともワインの楽しさのひとつですね😉💓

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ワインとは時空の旅人。

ブルゴーニュのオー・コート・ド・ニュイ。ブルゴーニュ屈指の銘醸地です。今回は、この赤ワインの6年と22年の垂直テイスティング。16年の熟成の差異を検証します。生産者は《ドメーヌ・グロ・フレール・エ・スール》です。

 

この造り手の特徴は、繊細さのなかにも、ピノ・ノワールの厚い果皮の〝重み〟を舌の上にズドーンと感じさせる力強さにあります。とりわけルビールージュの輝きを放つ《2013》に合わせたいのは、極上サーロインの焼きしゃぶです。《2013》の豊潤な果実味と厚みあるタンニンによって、口の中でとろける肉の旨みをさらに引き出してくれるのです。

 

ところが《1997》になると、一変してパワフルな《2013》の面影はなくなります。液面のエッジ部は、完全に色が抜け落ち、濁った紫蘇ジュースのような色調。グラスを傾けると、壁面にしずく跡がはっきり残るほどの、とろみ具合です。黒麹もろみ酢を彷彿させる妖艶な香りに、杏子や梅ジャムのような上品な果実味&甘酸っぱさで、その甘みと酸のバランスが絶妙なのです。

 

そんな丸みのある《1997》には、適度にさしが入った〝カイノミ〟の焼肉がよく合います。《1997》のとろみがまるで梅ジャム風味のタレのようにからみ、肉の脂をより甘く濃厚に味わうことができるからです。落ち着いた《1997》のアフターに導かれるように、カイノミの味の輪郭が浮かびあがってくるから不思議です。

 

同じ造り手の同じ土地の同じぶどう品種。違いはヴィンテージのみ。しかし、色も香りも味わいも、まったく異なります。ワインにとっての6年と22年の〝時間差〟は、私の想像をはるかに超えています。ワインとは時空の旅人。時空のへだたりがワインをおもしろくするのですね😊

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わたしの敬愛する女性醸造家🍾👩

クリュッグモエ・シャンドンなど、有名なグランメゾンの多くは、ぶどう農家よりぶどうを買い取って、シャンパーニュ醸造する〝NM(ネゴシアン・マニュピュラン)〟という生産者業態です。

 

一方、〝RM(レコルタン・マニュピュラン)〟はぶどうの栽培から醸造までを一貫して行っている、家族経営などの小規模生産者。

 

生産者数はRMの方が圧倒的に多いのですが、生産量や出荷量が限られているため、RMのほとんどが稀少性の高いシャンパーニュです。

 

わたしの敬愛する造り手のひとり、「女性のRM、第一人者」と評されるのが《マリー・ノエル・レドリュ》。彼女は自身をふくめ、たったふたりで畑を管理をしている超小規模の生産者です。自然の恵みを大事にする彼女のフィロソフィーは、培養酵母は使わず、畑の管理(減農薬農法)から、ルミアージュ・デゴルジュマンまで手作業という徹底したこだわりようです。

 

生み出されるシャンパーニュは、凛とした骨格と、みなぎるパワーがありますが、やはり女性らしいエレガントさとやさしさを兼ね備えている点が最大の魅力といえるでしょう。

 

そんな彼女のシャンパーニュと、ぜひ合わせたいのが〝甲殻類のビスク〟。《マリー・ノエル・レドリュ》の味わいと、共通するところがあるからです。甲殻類のエキスを最大限に引き出したスープは濃厚かつ力づよく、それをクリームで伸ばすことによって、まろやかなコクとやさしい甘みがスープ全体を包み込んでくれます。

 

今回は《マリー・ノエル・レドリュ/グランクリュ〝アンヴォネ〟エクストラブリュット》と『甘エビのビスク』のマリアージュ

 

甘エビの濃厚な旨味と豊かな香りが、クリーミーでやわらかなヴェールにつつまれながら、口中に広がります。《グランクリュ〝アンボネイ〟》がそのヴェールのすき間に流れ込み、豊満な果実味は甘エビと相まって、その力強さを発揮します。彼女の品格をあらわすかのごとく、キリッとした美しい酸味と、わずかな苦味が、甘エビ/クリーム/ピノ・ノワールを巧みにからませながら、傑作の三重奏を奏でるのでした👏

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驚異の〝シックス・バランス〟🍾😲

シャンパーニュ地方、モンターニュ・ド・ランス地区はいわずと知れたピノ・ノワールの名醸地。その自然公園内のリュード村に居を構える《カナール・デュシェーヌ》は、さくねん設立150周年をむかえた老舗メゾンです。

 

自社畑も所有していますが、NM(ぶどう購入して、醸造・熟成・瓶詰めをする生産業態)であるカナールデュシェーヌが創造するシャンパーニュの特筆すべき点は、なんといっても〝バランス〟です。私が定義する〝バランス〟とは、ファーストアタックから余韻にいたるまで、「酸味・甘味・渋味・ 苦味・果実味」の5つの要素が崩れることなく、絶妙な均衡で保たれていることです。

 

これは、厳選した60もの村々からぶどうを買いつけブレンドをしているからこそなせる技ですが、リュード村、マイィ村、アイ村だけでなく、コート・デ・バール地区にまで広範囲にわたるぶどう畑から摘み取られたピノ・ノワールブレンドするのが「カナールデュシェーヌ」の最大の特徴といえます。

 

コート・デ・バール地区はシャンパーニュ地方の南で、ブルゴーニュ地方に隣接。土壌はシャブリと同じキンメリジャンですが、冷涼な土地のため、シャルドネは育ちにくく、作づけ比率はピノ・ノワールが圧倒的な高さをほこります。フランス3大ロゼのひとつ、〝ロゼ・デ・リセ〟の名産地であり、そのピノ・ノワールの品質は折り紙つきです。

 

数年の眠りから覚めた《オーセンティック ロゼ》は、ピンクがかったあたたかみのあるオレンジカラーに経年変化します。グラスにそそぐと一瞬にして泡を吹き上げますが、口に含むと愛らしいさくらんぼや木いちごのベリーの香りに包まれます。八角やピンクペッパーをフルーツビネガーに浸したような風味は、熟成によるものでしょうか。

 

そんな《オーセンティック ロゼ》とあさりの白ワイン蒸しとの相性は抜群です。《オーセンティック ロゼ》が本来合わせもつ5つの要素にあさりの「塩味」が加わることで、6つの要素が驚くべき均整を保ちながら、異次元の旨味へと導いてくれます。このマリアージュは驚きであり、感動的です。皆さまもぜひ、この〝シックス・バランス〟をお試しくださいね😉 🥂

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〝鮨シャン〟で迷ったら、ボランジェ🍣🍾

シャンパーニュは食前酒。そう思っている日本人は少なくありません。しかし、シャンパーニュは食前酒だけでなく、食中酒・食後酒としても楽しめる「万能酒」です。

 

しかし、どんなシャンパーニュでも「万能酒」になりえるかといえば、そうではありません。すっきり系のスパークリングワインでは、この〝大役〟は務まらず、「万能酒」として〝認定〟されるには、(1)濃厚で(2)複雑、かつ(3)長い余韻の3要件が必須です。

 

そんな「万能酒」としての秀逸シャンパーニュのひとつに、ボランジェの《スペシャル・キュヴェ》があります。とくに鮨との相性は抜群。《スペシャル・キュヴェ》には前述の3要件に加え、強さと厚みの両方を兼ね備えているため、さまざまな鮨ネタを受け止めることができるのです。

 

さらに、《スペシャル・キュヴェ》だけでなく、ボランジェの《ロゼ》をスタンバイさせればよりベターです。私の自説「黄金の方程式」どおり、赤身やカツオなどの赤系のネタにはロゼシャンパーニュを、タイや平目などの白系のネタには、白シャンパーニュを合わせれば、はじめのアテから最後のにぎりにいたるまで100%鮨を堪能することができるからです。

 

同じ造り手の白とロゼのシャンパーニュを同時に楽しむことは、香りやテイストの共通点を見出せるだけでなく、その造り手の根源的な思想を深く理解するチャンスでもあります。食材の個性を上品に引き立てつつも、強さと厚みでしっかり受け止める、ボランジェの懐の深さは一級品です。鮨屋シャンパーニュを迷われた際は、ぜひボランジェをお選びください😋🥂✨

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平成最後のロゼ・シャンパーニュ🍾

美しすぎます。色も泡も味も。クリアボトルに鮮やかに咲く、アネモネの花も…。

こんなに美しいシャンパーニュがこの世に存在するのですね。

 

19世紀末~20世紀初頭にかけて、欧州ではアール・ヌーヴォー(新しい芸術、という名の美術運動)がひろまりました。その価値観と、メゾンの哲学がおなじであるペリエ・ジュエのために、この運動の中心人物であったエミール・ガレが描き下ろした名画です。現在はシャンパーニュペリエ・ジュエ・ベル・エポック」のラベルとして世界中で支持されています💐

 

このアネモネの花のように、大胆かつ繊細な《ベル エポック ロゼ 2004》。うっすらとオレンジかがったサーモンピンクは、まるでラベルの花と呼応しているかのようです。いちご、フランボワーズ、カシスの香りにクロワッサンと焦がしバター、とりわけ酵母の香りがきわだち、瓶内二次発酵と熟成のクオリティの高さを感じさせます。シャルドネ比率の高いベル エポック ロゼは、フレッシュさとエレガントかつ繊細なフィネスが特徴です。使用されるのはグランクリュの最高級のシャルドネで、その洗練されたクリアな旨みと、はかりしれない厚みに圧倒されてしまいました。加えてブレンドされた上質の赤ワインが、まろやかなコクを幾層にも重ねて、力強さとエレガントなフィネスを感じさせてくれるのです。

 

合わせる料理も、力強さと繊細さ、両方を兼ね備えたものがベストです。今回は幻の高級魚こと、〝クエ〟のポワレと。白身でありながら、濃厚な旨みがクエの特徴です。

 

ふっくらと仕上がったクエは、ベルエポックと同じく、厚みある魚の旨みを存分に感じます。シャンパーニュと合わさることで、直線的なうまみに、動きと奥ゆきがうまれ、より立体感のある味わいに。豊かな風味の青海苔のリゾット&チーマディラーパのフリットは、魚とシャンパーニュをつなぐ架け橋のような存在感です。

 

ベル エポックとは〝美しき時代〟を意味します。いよいよ平成が終わります。従来の形式にとらわれず進化する、アール・ヌーヴォーペリエ ジュエにならい、迎えくる新たな時代に思い巡らす夜となりました🌙🥂✨

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ルイーズ1985🍾🥂

いまでは信じがたいことですが、かつてはシャンパーニュは〝甘口〟しか存在せず、食後酒として楽しむことがほとんどでした。

 

そんななか「ブリュット(辛口)シャンパーニュ」を発明し、ワイン界に革命をもたらした人物こそ「マダム・ポメリー」です。

 

この偉大なマダムへのオマージュ(讃辞)から、愛娘の名を冠しリリースされたのが《ポメリー・キュヴェ・ルイーズ》。彼女のシャンパーニュ哲学が凝縮された、ポメリー最高傑作のプレステージ・キュヴェといえます。

 

ファーストヴィンテージの1979年から最新の2004年ヴィンテージまで、ぶどうの優良年のみにつくられてきた特別なシャンパーニュ。今回いただいた「ルイーズ1985」はリリース5本目にあたり、かつグラン・ヴィンテージの年でもあります。

 

琥珀(こはく)色に輝くそれは、ほんの少しグラスに注ぐだけで、息をのむ気品の高かさと優美なオーラを放ちます。濃縮した甘さのなかに、酸がじっくり時間をかけて溶け込んだ香りは、古酒のブランデーを彷彿とさせ、舌に意識を集中させると、極めて微細な泡が、最後の力でかすかに弾けるのを感じます。

 

〝きれいな熟成〟という表現は、「ルイーズ1985」のために存在するのではないか…と思うほどです。酸味と果実味、コクが完全な調和を保ちながら熟成されているのです。しかし、ほんの少しでもこれ以上酸化が進むと、その三位一体のバランスが一瞬で崩れてしまいそうなほど、もろくて繊細にも感じます。まさに、この薄氷のようなクリスタルグラスのようでした。

 

一方「ルイーズ2004」は、レモンやグレープフルーツなどの柑橘が香り、溌剌(はつらつ)とした酸とわずかな苦み、そしてヨーグルトのような爽やかな乳の風味が味わいに膨らみを与えています。

 

食事とともにシャンパーニュを楽しむという新しいライフスタイルを創造した、マダム・ポメリーは、歴史を変えた偉大な女性です。きれいに熟成された「ルイーズ1985」に触れることで、あらためてマダムへのはかりしれないオマージュの強さを感じた一夜となりました🥂✨🌙

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