未知なるマリアージュの世界へようこそ!

私の超オススメワインをご紹介します🥂🍷✨

畑がわかると、もっとおもしろい

おなじ村内でも畑の位置によって気候条件がことなり、ワインの味わいにも違いが生じます。たとえば、ブルゴーニュの銘醸地「ジュヴレ・シャンベルタン」村。優良畑が村の南北に並んでいます。北側は標高が高いことも相まって酸とミネラル感がつよまり、南側では凝縮感ある果実味の力づよいワインに。

 

今回ご紹介する〝シャンポネ〟という畑は中程に位置し、ジュヴレ・シャンベルタン村の特徴を知るには最適な一本といえます。このシャンポネを2013年から手掛けているのが《フィリップ・シェロン》。彼の祖父ポール・ミセが1930年代後半にヴォージュとニュイ・サン・ジョルジュの畑を購入したのが、このドメーヌのはじまりです。現在は70%以上をしめる50年来の古樹を、できる限り自然な状態で生育させることをモットーに、肥料、除草剤、殺虫剤の使用をきびしく制限。

 

そんなフィリップ・シェロンの《ジュヴレ・シャンベルタン・1erシャンポネ2014》は鮮やかな濃厚色で、スミレなどのフローラルとリコリスなどの甘苦スパイスの芳香。味わいにはプレモー石灰岩による繊細なミネラル、まるみを帯びたエレガントな酸、シルクのようになめらかタンニンが共存しつつ、芯の通った力づよさを感じます。これぞ〝ザ・シャンポネ〟であり、ジュヴレ・シャンベルタンらしさがよくあらわれています。

 

合わせる料理は、味の輪郭やコントラストがはっきりとした魚料理がおすすめ。「パセリのソースでいただくマグロの低温調理」は、ふっくらとしたマグロの旨みが芳醇なワインで引き立ち、鮮烈なパセリの苦みでさらに風味豊かな一皿へと昇華します。

 

ジュヴレ・シャンベルタンらしさを理解しながら、シャンポネにも注目する。つまり村だけでなく、畑の特徴もわかるようになるとワインはもっと楽しくなります🍷✨

 

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本枯れ節には、コント・ド・シャンパーニュ

家族経営で代々引き継がれてきたシャンパーニュメゾン《テタンジェ》。その品質と格式のたかさは、フランス大統領が主催する公式行事でふるまわれるほどの折り紙つきです。

そんなフランスを代表するテタンジェのフラッグ・シップといえば、《コント・ド・シャンパーニュ》。シャルドネのみでつくられるブラン・ド・ブランで、日本のある伝統食ととても相性のいいシャンパーニュです。

その食材とは、出汁(だし)をとるための「かつお節」「さば節」「まぐろ節」といった本枯れ節。シャンパーニュと本枯れ節は、ともに微生物による発酵と熟成によって造られるという共通点があるうえ、コント・ド・シャンパーニュには、燻し香と高級な出汁を想わせる上品かつ洗練された旨みを特につよく感じるのです。

なかでもシャンパーニュ史上屈指のグレート・ヴィンテージ「2004年」の芳香は個性的。燻製、埃(ほこり)、カビ、ハチミツの香りがグラスで渦巻き、口に含んでもなお、ループしながら香り立っているのです。メゾン曰く、「バターやブリオッシュの芳香を付与するため、4~5ヶ月オーク樽で熟成させたワインを5%アッサンブラージュしている。その芳香は時間とともに燻製香に発展する可能性がある」

今回、この2004年に合わせた魚料理はスズキのヴァプール。ふっくらと蒸し上がったスズキを、「かつお節」でとった出汁と白ワインがベースのソースでいただく一皿。シャンパーニュの渦巻く芳香ループに薫り高いかつお節が交わると、淡泊なスズキは格段と風味をまし、ソースとシャンパーニュのコクが、凝縮感ある白身の旨みを味わわせてくれます。

スタンダード・キュヴェの《ブリュット・レゼルヴ》も「まぐろ節」との相性がすこぶるよかったのもすでにご紹介済。本枯れ節と融合するテタンジェ。機会があれば、ぜひお確かめくださいね🥂✨

 

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鮨とブラン・ド・ノワールの楽しみ方

黒ブドウだけで造られるシャンパーニュ、ブラン・ド・ノワール。持ち味の厚みとコクが、鮨ダネの旨さを引き立てます。ピノ・ノワールピノ・ムニエブレンドものが大半をしめるなか、それぞれが単一使用されたブラン・ド・ノワールを、鮨ダネごとに変えていただくのも楽しみ方のひとつです。

 

たとえば、赤身やサーモンといった濃厚な甘みの鮨ダネに、ピノ・ノワールを合わせる。ピノ・ノワールのコクと澄んだ旨みは、魚の甘みを増幅させます。それに対し、ヒラメやタコなどのあっさりとした鮨ダネにはピノ・ムニエを。品種由来の苦みと複雑みで、鮨は深みをまし、味に立体感が生まれます。

 

シャンパーニュのおすすめ生産者は≪フィリップ・フーリエ≫。ピノ・ノワールだけの≪ベル・ビーニュ≫、ピノ・ムニエだけの≪ドゥルモット≫を手掛けています。同一生産者でこの2種がいただけるという、とても貴重な存在です。

おなじ黒ブドウでも、ピノ・ノワールピノ・ムニエでは、香りや味が異なるもの。その〝微差〟に気づくと、鮨とのマリアージュが一段と楽しくなるでしょう🍇

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ヴィンテージの〝個性〟を楽しむ

同じ時期に、同じ銘柄の、同じヴィンテージのワインを楽しんだはずが、まったく味が違う。そんな経験はありませんか?

 

それはワインの〝個性〟によるもの。長年の保存状態によって大きく変わってくるのです。 たとえば、«ドン・ペリニヨン・ロゼ1982»。過熟の柿をおもわせる色調と、最後の力をふりしぼるかのごとく、きわめて微細な泡が特徴です。やさしい酸と甘みが支配し、りんごのブランデー「カルバドス」のような香りがふんわり漂います。つい先般いただいた同じヴィンテージとは、似ても似つかぬテイストです。

 

個性がより顕著になるオールドヴィンテージの場合、わたしはシャンパーニュを先にテイスティングしてから、合わせる料理を考えます。今回、この心地よい甘みに合わせたのはフォアグラのムース。舌のうえでとろけるような滑らかさで、濃厚なフォアグラの旨みとシャンパーニュの甘みが抜群の相性です。さらにカカオクランブルの苦味が双方を引き立てます。

 

抜栓してみないとわからない個性ですが、これもヴィンテージシャンパーニュの魅力であり、醍醐味です。この緊張感あふれる〝一期一会〟を楽しめるようになると、おのずとワインへの感謝の気持ちが高まります🎄✨

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ロッシーニが奏でる、マリアージュ

作曲家と美食家、ふたつの顔をもつロッシーニ。かれが考案した「牛ヒレ肉のロッシーニ風」は、ステーキをフォアグラとトリュフとともにいただく、華やかなメインディッシュです。

わたしはこの料理に、フルボディーの赤ではなく、ほどよくこなれたオークセイ・デュレス村のワインを合わせます。偉大なロッシーニ料理を引き立てるには、「ヒレ肉」「フォアグラ」「トリュフ」をひとつに結ぶ〝ピアノ線〟のようなワインが必須です。オススメは、エレガントな細さと芯の通った強さをあわせもつ《コシュ・ビズ・アール/オークセイ・デュレス2010》。

 

エッジはオレンジ色に枯れつつも、なめらかなタンニンがしっかりと主張。しずかに舌にひろがるエレガントな旨みが、味わいのピークであることを物語っています。この絶妙のこなれ感が各食材のうまさを洗練し、一本の線上に結びつける。ロッシーニの代表作である「スイス軍の行進」のファンファーレが鳴り響くかのように、華やかな料理がより鮮烈に引き立てられるマリアージュです🎺✨

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ヴリニー村のピノ・ムニエ

シャンパーニュ地方モンターニュ・ド・ランス地区は、言わずと知れたピノ・ノワールの銘醸地です。そのなかで、シャンパーニュ屈指の「ピノ・ムニエ」を生み出す村があることをご存知でしょうか。ずばり、それは「ヴリニー村」。モンターニュ・ド・ランスの北西端に位置するプルミエ・クリュです。

 

今回はその魅力を存分に味わえる一本、《エグリ・ウーリエ》の《レ・ヴィーニュ・ド・ヴリニー1er・ブリュット》をご紹介。ヴリニー村のピノ・ムニエだけで造られるブラン・ド・ノワールです。

 

山吹ゴールドの輝きに、エネルギーみなぎる泡圧。はちみつビネガーや牡蠣を想わせるミネラリーな磯の香りが混在します。とりわけ印象的なのが、刻々と変化する苦み、それでいて終始一貫、力強さと厚みが主張する点。これに合わせる一皿は、甲殻類ソースでいただくのどぐろ。旨味のつよいのどぐろは、苦味の変化に伴って内から甘みが引き出され、深みをましたソースの濃厚な甲殻類の風味とみごとに調和します。

 

樽使いの名士と呼ばれるエグリー・ウーリエが、この銘柄に限っては木樽を使用しません。オークの香りをも寄せ付けない、抜きんでた個性のヴリニー産ピノ・ムニエ。のどぐろのように、脂分が多く、とろけるような舌触りの白身魚には、ぜひ《レ・ヴィーニュ・ド・ヴリニー1er・ブリュット》を合わせてお楽しみください。ヴリニー村のピノ・ムニエのすばらしい〝個性〟を体感できるはずです🥂🍴✨

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「生ずし」にはエクストラ・ブリュット

関西は「生(き)ずし」、関東では「しめ鯖」と呼ばれるサバの酢じめ。足の早いサバを日持ちさせるために考えられた食べ方です。生ずしとしめ鯖の明確な定義の違いはありませんが、関西の生ずしの方がしっかりとしめられ、酢塩の味がよくしみているのが一般的。

 

そんな酢のよくきいた生ずしを、ぜひ、エッジのきいた酸が特徴のシャンパーニュ、「エクストラ・ブリュット」とともに食していただきたい。「エクストラ・ブリュット」とはシャンパーニュの最終工程で添加される糖分が、極めて少ない0-6g/ℓ量のもの。ぶどう本来の糖分はアルコール発酵ですでに分解されているので、酸味がきわだった極辛口のシャンパーニュに仕上がるのです。酢とは風味のことなる酸味が重なることで、生ずしの酢香はより芳醇さをまし、ゆたかな酸味に関西の甘めのシャリが相まって、サバの旨みがいっそう引き立ちます。

 

おすすめはピノ・ムニエ主体のエクストラ・ブリュット。「生ずし単味」「昆布のせ」「炙り」と食べ進めると、深みを増していく鮨にピノ・ムニエの複雑味が折り重なるよう。《サヴィエ・アレクサンドル/オーセンティッカ1erクリュ》はすこしシャルドネブレンドされている分、エレガントさも兼ね備え、生ずし単味にはそっと寄り添い、薫り高い昆布と酢の風味をも損なうことはありません。芳ばしさと旨みが増す炙り鮨には《クリストフ・ミニョン》。ピノ・ムニエ100%ならではの厚みと複雑味が鮨との均衡を保ち、鮮烈な酸とともに凝縮感あるサバの旨みを堪能できます。

 

地方や店ごとに個性がひかる「サバの酢じめ」。これもまた、シャンパーニュ選びを楽しませてくれる鮨ダネです🐟🥂✨

 

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