かの有名な〝ドンペリ〟こと「ドン・ペリニヨン」は、長期熟成後に味わいのピークを迎えたオールド・ヴィンテージを〝P2(約16年熟成)〟〝P3(25年以上の熟成)〟という名でリリースしています。
〝ドンペリ〟にかかわらず、ぶどうの秀作年だけに、その年のぶどうだけを使ってつくられたヴィンテージ・シャンパーニュは長期熟成させるのが一般的です。
一方、ノンヴィンテージ(NV)のシャンパーニュは複数年のワインが混ぜられており、早飲みタイプとしてリリースされます。
しかし、たとえ〝NVシャンパーニュ〟であっても、とくに「グランクリュ(特級)」シャンパーニュの場合、長期熟成に十分耐えうるものも少なからず存在します。
リリースされてから15年以上もの長い年月を経た《ジョルジュ・ヴェッセル/ブリュット グランクリュNV》もそのひとつです。
しっかりと色づいた黄金色と、口の中でしずかに消えゆく繊細な泡。食パンを想わせるやさしい酵母香に、少しエッジのきいたシェリーのフロール香が香ります。
合わせる料理は、すこし甘めのコクがあるお肉がオススメ。熟成シャンパーニュ特有の、梅酒の古酒のようなまろやかな果実味&おだやかな酸は、ほのかな甘みを伴うお肉の旨味と、相性抜群だからです。
大阪は〝なにわ黒牛〟のハニーマスタードソース。赤身にもかかわらず、とろけるような肉汁がたいへん美味ですが、《ジュルジュ・ヴェッセル》のまろやかな果実味と、ソースにふくまれる蜂蜜のほのかな甘みで、お肉はさらに深みと奥ゆきをまします。梅酒の古酒のような、まるみを帯びた酸味と、少しテイストの異なるマスタードの酸味が、より複雑で優美なハーモニーを奏でてくれるのです。なにわ黒牛と《ジュルジュ・ヴェッセル》の見事なまでの融合に、ココロが奪われ、すっかり酔いしれてしまう私でした...。