鮨にシャンパーニュを合わせる〝鮨シャン〟。覚えておきたいのは、鯛やヒラメ、イカなどの味の薄いネタには「NV」を、トロやうに、鰻(うなぎ)などの味の濃いネタは「ミレジメ」を合わせるという〝鮨シャン〟の不文律です。同じ造り手の「NV」と「ミレジメ」を同時に楽しむ機会に恵まれるのなら、〝鮨シャン〟の醍醐味はぐっと広がります。
なかでもオススメは、1970年創業のクリスチャン・エティエンヌの「NV」と「ミレジメ」。その違いが明瞭だからです。
「NV」はNon Vintage(ノン・ヴィンテージ)の略で、味の均一性を維持するために、複数年のワインをブレンドしてつくられます。たとえば、私のお気に入り《ブリュット キュヴェ トラディシオン NV》は、金木犀(きんもくせい)の香りがふわりと舞い、金柑のシロップづけのような心地よい甘味が口の中いっぱいに広がります。淡泊な白身魚などを合わせると、素材のやさしい甘みを助長しながら、単調な味わいに華やかさと膨らみを与えてくれるのです。
一方ミレジメ(ヴィンテージ)は、複数年のブレンドではなく、作柄のすばらしい秀作年のみのぶどうでつくられます。そのため収穫年によって味は異なりますが、熟成期間が最低36ヶ月と定められている「ミレジメ」は、15ヶ月の「NV」と比較すると芳醇でリッチな味わいが広がります。《エクストラ ブリュット ミレジメ2010》もしかり。ブランデーの芳香とともに、フランベの炎までもを彷彿とさせる、力強さと深みある味わいが特徴です。そのため濃厚なネタにもパワー負けせず、凝縮された素材の旨みをよりいっそう引き立ててくれるのです。
味の薄いネタには「NV」シャンパーニュ、味の濃いネタは「ミレジメ」シャンパーニュ。私にとっての〝鮨シャン〟の楽しみ方のひとつです😊🍣🥂