キャビアには〝辛口シャンパーニュ〟がよく合うといわれています。しかし、新鮮で上質なキャビアには、熟成シャンパーニュの方が断然合うとわたしは思っています。理由は、「エクストラ・ブリュット」や「ノン・ドザージュ」などの酸がつよいシャンパーニュだと、せっかくの繊細なキャビアの風味が消されてしまうからです。これはもったいない…。
そこで、わたしがオススメするのは《サン・J・プリエスト》。このシャンパーニュは、やわらかく優しい泡と、甘酸っぱい芳醇な熟成香が特徴です。20年近く瓶内熟成させると、淡いべっ甲色の、それは、それは美しい輝きを放ちます。まるみを帯びたまろかな酸と、とろけるようなキャビアのピュアで軽やかな旨みが、絶妙なコントラストを描くのです。
このように、なめらかな舌触りとともに、繊細な風味を兼ね備えているキャビアには、辛口シャンパーニュではなく、〝20年プリエスト〟のようなまったりとした熟成シャンパーニュ方がよく合います。セオリーは大切なことですが、一方で常識を疑うことも、感性を高めるためには必要なことかもしれませんね。