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私の超オススメワインをご紹介します🥂🍷✨

古くて若い〝レア〟シャンパーニュ

シャンパーニュは大きく二つに分類されます。主たるヴィンテージワインに複数年のワインをブレンドする「ノン・ヴィンテージ(NV)」と、単一年のぶどうから造られる「ヴィンテージ・シャンパーニュ」。安定的に市場供給できるNVに対し、秀作年のみに造られるヴィンテージ・シャンパーニュは稀少性が高まります。

 

なかでも《パイパー・エドシック》が手掛ける《レア》は、とりわけ稀少なヴィンテージ・シャンパーニュ。1976年以降、二度のロゼを含めても11ヴィンテージしか生産されていません。かつての、王妃マリー・アントワネットへの献上を記念し、誕生したレア。その品質と格式の高さを守るためには、厳格なヴィンテージ・ジャッジが必須といえます。

 

今回いただいたのは《レア2002》。最大の特徴は、信じがたいほどの若々しさ。経年18年とは到底思えない、フレッシュ感と凝縮感をもちあわせています。イエローゴールドの微細な泡がアグレッシブに立ちあがり、柑橘、イースト、燻製香を放ちます。シャルドネ70%の、透き通るような透明感と繊細なフィネス。それでいて、芯の通った強さと底知れぬパワー。その凛とした佇まいは、微塵の隙をもみせない〝完璧な20代の女性〟を彷彿とさせます。あわせる料理は、力づよい弾力と旨味の「黒あわびのステーキ」。肉厚の身を噛みしめるたび、《レア》の凝縮した旨味があわびに染み込み、芳醇な美味しさに満たされます。追って、爽やかな香草バターが、レアのフレッシュ感に押されるかのように鼻孔を駆け抜けます。

 

レア2002との同時比較は、《エッセンシエル・キュヴェ・ブリュットNV》。パイパー・エドシックの看板商品であるキュヴェ・ブリュトから、ポテンシャルの高いロットを抜きとり、通常より長く熟成させたもの。抜栓したのは、主に2008年ヴィンテージでつくられ、4年間の瓶熟の後、2013年3月にデゴルジュマン(澱引き)されたもの。オレンジゴールドの輝きで、酸と苦味が溶け込んだ、おちついた熟成味が印象的な一本です。

 

“ICONIC(象徴的)”と名付けられたレア2002は、メゾンいわく「2035年まで楽しめる」とのこと。正直にいえば、あまりの「若々しさ」に驚き、抜栓が少し早すぎたのではないかと後悔しています。これからの〝進化〟も気になるため、10年後ふたたび「レア2002」にトライしようと、思いを新たにした次第です。

 

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アートとシャンパーニュの共通点

ワイン大国フランス。そこは「芸術の国」でもあります。幼いころから〝アート〟に触れる生活環境で、幼稚園児ですら美術館にでむき、模写をする授業があるというから驚きです。絵画を買うことは日常的。ごくふつうの一般家庭でも、有名無名をとわず多くの絵画が部屋に飾られています。フランス人にとって、生活の一部であるアート。それゆえ、アーティストを尊ぶ精神が、おのずと育まれるのでしょう。

 

それを物語るひとつが、《テタンジェ・コレクション》。1978年をファースト・ヴィンテージに、優良年のみ、コンテンポラリー・アート(現代美術)のデザイナーとコラボレーションしています。その表現方法に脱帽。特殊な容器で完全に覆われた、ボトル全体がアート作品と化しているのです。そこがまるでキャンパスのように。〝TAITTINGER〟の文字すら探さなくてならないほど、メゾンの存在を感じさせません。

 

ポピーの花咲く黄色いボトルは、ロベルト・マッタとのコラボ《1992》。青いポップな人物画は、ロイ・リキテンスタインの《1985》ヴィンテージ。シャンパーニュはともに褐色がかった鼈甲(べっこう)色で、黒蜜のような甘い香りが支配しています。そこから時間とともにあらわれる、個性。1992年はワインらしい果実味をみせ、1985年は甘みと苦みが交互に訪れます。刻々と変化するなか、双方とも瓶底に近づくほど色と味わいが濃厚に。グラスには霞(かすみ)のような浮遊物がゆらゆらと泳ぎ、余韻が果てしなく続きます。「テタンジェのノン・ヴィンテージは、数十年の熟成にも耐えうる」が持論ですが、ヴィンテージであればなおのこと。それが体感できる素晴らしいアートシリーズです。

 

生きてくうえで、アートもシャンパーニュも必須ではないかもしれませんが、「人生と心を豊かにする」という点では、揺るぎない共通点といえそうです🖼🍾✨

 

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松阪牛の「トウガラシ」

「ザブトン」や「シンシン」など、ユニークな名でよばれる牛の稀少部位。わたしの好きな松阪牛「トウガラシ」もそのひとつです。一頭から二キロほどしかとれない赤身肉で、唐辛子のような三角形をしているのが名の由来。運動量の豊富な腕にちかい部位のため、弾力ある身質で中心部には細かなサシ。噛みしめるたびに内側から肉の旨味が溢れます。

 

そんな松阪牛トウガラシには《2004年ジュヴレ・シャンベルタン》がおすすめ。2004年は他のヴィンテージにはない、独特の青みが特徴です。これがエキゾチックなスパイスのようで、あふれでる松阪牛の上品な肉汁をひきたてます。今回は1268年創業の《ラウル・クラージェ》。はじめてワインを瓶詰めしたことでも知られる、歴史あるネゴシアン・エルヴールです。

 

おなじ牛でも部位がちがえば食感や味わいは大きく異なるもの。部位名とその特徴を知ることで、ワインとの楽しみ方は格段と広がります🍷🐃✨

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シャンパーニュのシャブリ

シャンパーニュのおもな生産地は、シャルドネの「コート・デ・ブラン」、ピノ・ノワールの「モンターニュ・ド・ランス」、ピノ・ムニエの「ヴァレ・ド・ラ・マルヌ」の三地区です。これらが属するマルヌ県の栽培面積は、シャンパーニュ全体の七割をしめます。

 

そんななか、忘れてはならない銘醸地がオーヴ県の「コート・デ・バール地区」。シャンパーニュ地方の南に位置します。最大の特徴は、その地質。ジュラ紀のキンメリジャンという石灰質土壌で、いわずもがな、ブルゴーニュのシャブリとおなじ土壌です。ミネラル豊富で旨味のつよい果実となる、キンメリジャン。シャブリはシャルドネ種ですが、より冷涼なコート・デ・バール地区では、おもにピノ・ノワールが栽培されています。

 

わたしのお気に入りは、ポリゾという小さな村のRM、《ピオロ》。自然に配慮したブドウ栽培で、優しくもしっかりとした骨格ある味わい。黄金色に輝く《キュヴェ・ド・レゼルヴ》は、酵母の香りがふわっと広がり、腹の底まで染みいる深いコク、絶妙な熟成感がとても美味です。あわせる料理は、塩とオリーブオイルのみでいただく新鮮なサラダがおすすめ。野菜本来の甘みと滋味ぶかい旨みが、ピノ・ノワールのコクで一層ゆたかに感じられます。

 

モンターニュ・ド・ランスのチョーク土壌とは、ひとあじ違った〝コート・デ・バール〟のピノ・ノワール。ぜひ、お試しください🍇🥂

 

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ロイズの生チョコだけは〝アペタイザー〟

フレンチやイタリアンでは、チョコレートは食後の〝デザート〟という印象があります。ただ、ロイズの生チョコだけは食前酒に〝アペタイザー(前菜)〟として合わせるのがわたし流。

 

とりわけオススメなのが、シャンパン風味の生チョコと《ピエール・ミニョン/ブリュット・プレスティージュ》の組み合わせ。至高ともいえる相性度は、この生チョコにシャンパーニュ《ピエール・ミニョン》がふんだんに使用されているためです。

 

《ピエール・ミニョン》は、ピノ・ムニエの銘醸地であるヴァレ・ド・ラ・マルヌの生産者で、ムニエの扱いはまさに職人技。採れたてのレモンの皮をかじったような、研ぎ澄まされた苦み。その余韻の長さに驚かされます。派手さはなく上品かつエレガント、それでいてしっかりとした厚みとコク。カカオの苦み、ミルクのコクと融合し、チョコから香るはなやかなシャンパーニュ香がムニエの余韻と重なります。

 

ロイズの生チョコにおなじシャンパーニュを合わせる。ちょっとした「遊び心」で、アペリティフ(食前酒)の会話もはずみます🥂✨

 

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白×青のコンビネーション

種類の豊富なナチュラルチーズ。その数1,000を超えるといわれています。なかでも白カビタイプとえいば「カマンベール」。とろりとした柔らかさとマイルドな牛乳のコクがとても美味。また、ブルーチーズ(青カビタイプ)を代表するのが「ゴルゴンゾーラ」。濃厚な味わいで、個性的な香りと舌をさすような刺激的な塩味が特徴です。

 

このカマンベールとゴルゴンゾーラの名をかけ合わせた「カンボゾーラ」というチーズをご存知でしょうか。その名のとおり外は白カビ、中はブルー。双方のおいしさをあわせもつたいへんユニークなチーズです。

 

塩味のつよいブルーチーズと甘口ワインは定番の組み合わせ。とりわけカンボゾーラには甘口ワインの〝熟成もの〟をお薦めします。白カビを纏うことで、一般的なブルーよりやわらかな味わいのカンボゾーラ。熟成でまろやかになったワインの甘味と、とてもバランスがよいからです。

 

今回は《シャトー・ド・シャトリューズ1982》。生産者はすでに引退され、所有していた畑はソーテルヌ第一級のシャトー・ギローに引き継がれています。およそ40年の経年で茶褐色に変化したワインは、イソジンを想わせるヨード香、芳醇なお醤油の香り、ラム酒のあまい芳香がまじりあいます。黒糖やデーツのような上品で深みのある甘味と、繊細かつエレガントな酸。カンボゾーラのミルキーな味わいとピリッとした苦みが、一層ゆたかなに感じられます。

 

カンボゾーラは青カビタイプが苦手な方にもおすすめです。見かけられた際は、ぜひお試しくださいね✨

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バラとロゼの共通点

フランス語で〝バラ色の〟という意味のロゼ・シャンパーニュ。その製造方法はおもにふた通りです。黒ぶどうを果皮種子ともに浸漬し、色づいた果汁をぬきとる「セニエ法」。傾向として、色素がしっかり抽出されるので濃い色合いのロゼ・シャンパーニュとなります。対して、白ワインに少量の赤ワインを混ぜるのが「ブレンド法」。絶妙な調合バランスで、淡~濃くうつくしい色調をかなえます。

 

このブレンド法でロゼ・シャンパーニュを初めてつくったのが、1772年創業の《ヴーヴ・クリコ》。メゾンの顔である《イエローラベル》をベースに、上質の赤ワインをブレンドして《ローズラベル》がつくられます。爽やかでバランスのとれたイエローラベル。磯の香りただようアワビと相性抜群です。ローズラベルには、〝肝あえ〟がオススメ。とりわけ蝦夷アワビは肝の渋みがまろやかで、複雑ながらも旨味がきわだつ逸品。ローズラベルの深みと骨格ある味わいが、貝の旨味、絶妙なほろ苦さを引き立て一層おいしくいただけます。

 

セニエ法は抽出される色や渋みの調整が難しく、ブレンド法は赤ワインを別途につくる手間を要します。ロゼ・シャンパーニュは、労を惜しまない生産者の卓越した技術力のたまものです。きれいなバラが咲くのも、手間暇をかけ愛情をそそぐからこそ。バラもロゼもおなじですね🌹🥂✨

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