未知なるマリアージュの世界へようこそ!

私の超オススメワインをご紹介します🥂🍷✨

〝べんりさ〟か〝ふれあい〟か、それが難題

いまやインフラとなった、フードデリバリー。その歴史は江戸時代にさかのぼります。かつては、すしやそばなど〝自前〟で運んでくれました。ところが現代は、出前品を大手デリバリーサービス業者から受けとるのが主流になりつつあります。じつに便利な時代ですが、どちらかといえば、店が直接届けてくれる〝出前〟をわたしは好みます。大将や女将さんとのコミュニケーションを楽しみたいからです。

 

今日合わせたシャンパーニュは《コント・レミィ・ド・ヴァリクール》。ぶどうは三種混合の伝統的ブレンドで、バランスのよい一本です。経年変化で鼈甲(べっこう)色にひかり輝き、ハチミツのようなまろやかさが増幅。トロといった甘美な鮨と、とりわけ好相性にまじわります。

 

〝べんりさ〟を採るか〝ふれあい〟を採るか。このテーマこそ、常に私を悩ませる難題のひとつです。

 

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「色」を制するものは、ロゼ・シャンパーニュを制する

フランス語で〝バラ〟を意味するロゼ・シャンパーニュ。美しい色合いは、まさにバラを飾ったかのように、テーブルをはなやかに彩ります。系統別に配列した〝カラーチャート(色見本)〟のように、その色調はさまざま。

 

ロゼ・シャンパーニュを語るに、この「色」の知識は不可欠。色が似ているロゼは、不思議と味わいも似ているからです。たとえば、濃いレッドピンクの「モエ・エ・シャンドン」と「ローラン・ペリエ」。くすんだサーモンピンクの「ニコラ」と「ロアン・ロッセ」のように。前者はセニエ法、後者はブレンド法によるロゼ・シャンパーニュです。

 

セニエ法」は、黒ぶどうを果皮種子ともに浸漬。色づいた果汁をとりだし、アルコール発酵させます。色素がしっかり抽出されるため、色は濃いレッドピンクに。味わいは、苺やクランベリーなどのベリー風味がゆたかで、黒ぶどう由来のタンニン(渋み)もつよめです。対して、白ワインに赤ワインを混ぜる手法が「ブレンド法」。サーモンピンクやローズピンクを呈し、セニエ法にくらべると淡い色調です。味わいにおけるベリー感やタンニンは穏やかで、よりクリアな印象。「セニエ法」は黒ぶどうの浸漬時間がながいほど、「ブレンド法」は赤ワインのブレンド比率がたかいほど、色は濃く、前述の味特徴も顕著となります。

 

そんなロゼ・シャンパーニュを、ぎょうざと楽しむのがわたし流〝ギョウシャン〟。セニエ法のモエ・ロゼには、パクチーぎょうざといったすこし個性派を。甘酸っぱいベリー風味と、相性が格段よいからです。一方ブレンド法のニコラ、ロアン・ロッセは定番ぎょうざといただきます。ロゼの複雑味がありつつ、すっきりとした味わいは、肉の甘味、ニラの芳香、ニンニクの力づよさを引き立ててくれるのです。

できるだけ多くのロゼ・シャンパーニュの「色」を覚えることが、マリマージュ上達への近道。合わせる料理の色もイメージすることが大切です。経験を積んで、オリジナルの〝ロゼ・シャンパーニュ・カラーチャート〟を完成させてくださいね🎨✨

 

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うな重にあわせるワイン

関東と関西でことなる食文化。うなぎの蒲焼きはその最たる例です。関東のさばき方は、背開き。武士の多い江戸では、腹開きは割腹を連想させると敬遠されました。一方、商人の町、上方では「腹を割って話す」に通じる腹開きが好まれ、定着したのだとか。とかくいうものの、古今東西あいされる日本食うな重」。そんなうな重に合うワイン、ベスト3をご紹介します。

 

第3位:ソーヴィニヨン・ブランの白ワイン
ソーヴィニヨン・ブランといえば、フレッシュハーブの香りが特徴。青々しくさわやかな芳香が、薬味の〝山椒〟のようにうなぎの旨味をひきたてます。

 

第2位:エクストラ・ブリュットのシャンパーニュ

極辛口のシャンパーニュ。一般的なブリュットより加糖量がすくなく、エッジの効いた酸が魅力。うなぎの甘みがきわだちます。また、この酸が脂っぽさを拭ってくれるので、くどくならず最後のひとくちまで美味しくいただけます。合間に〝吸い物〟で口をリセットするのと同様。

 

第1位:熟成ブルゴーニュの赤ワイン
熟成ブルゴーニュの魅力は、乳酸系のやわらかな旨味。〝奈良漬け〟がつけあわせの定番であるように、この旨味がうなぎのコクにまろやかさを付与。より芳醇なうな重が味わえます。今回のつくり手は《ラブレ・ロワ》。クルーズ船や航空会社にも採用され、その品質は折り紙つきです。多彩なラインナップのなかでも、メゾンの本拠地である《ニュイ・サン・ジョルジュ1996》がわたしのお気に入り。芳醇なトリュフの芳香に、乳酸飲料のようなまったりとした旨味と熟成酸。まろみを帯びたうなぎの脂が舌をつつみこみ、やさしい酸がそれを導くかのごとく、深くしみわたります。

 

ワイン選びで悩んだときは、料理に添えられている薬味やつけあわせに着目することをオススメします。皿の上の〝名脇役たち〟にヒントが隠されているからです🥂🍴

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アンティークの意味するところ

一般的に、骨董品や古い家具などをさす〝アンティーク〟。「古い」を意味するフランス語です。おそらく、これをシャンパーニュの名に冠したのは、五千以上あるメゾンのうちキャティアだけでしょう。

 

多彩なラインナップを誇るのがシャンパーニュキャティア》。わたしのお気に入りは、プルミエクリュシリーズの《ブリュット》と《ブリュット・アンティーク》。両者のちがいは、リリース時期。たとえ、経年数による熟成差はあったとしても、ともに、豊満なアツミとまろやかコクを有するのが特徴です。

 

アンティークとならび、同義語として使われる〝ヴィンテージ〟という言葉。シャンパーニュ界では「秀作年」を意味します。あえてヴィンテージに限りなくちかい秀逸なNVを〝アンティーク〟と称し、近年ではそのワードさえ割愛した老舗メゾンの心意気。キャティアにわたしの心が奪われる理由です🥂✨

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鮨の順序

鮨をたべる際の〝順序〟を意識したことはありますか。一般的には、白身などのあっさりとした鮨ダネから、トロや鰻といった味の濃い鮨へ食べ進めるのがよいとされます。さきに濃厚な鮨を食べてしまうと、淡泊な魚が極度にうす味に感じられ、鮨ダネ本来の魅力を堪能できないからです。

 

この、淡泊から濃厚な鮨への流れにあわせて、シャパーニュを飲み変えてみるのも楽しみ方のひとつ。たとえば、前半は魚の風味を損なわないよう繊細かつエレンガントなもの、後半は鮨ダネと対等する、つよい旨味のシャンパーニュを合わせます。

 

わたしのおすすめは、コート・デ・バール地区の《ムタール》。ブルゴーニュのシャブリに近い生産地で、土壌もシャブリ同様、キンメリジャン。《プレスティージュ・ブリュット》は、シャルドネの繊細なフィネスと土壌由来のミネラル感がきわだつ一本。「桜鯛」に合わせると、鮨に塩がふられたかのように、鯛のやさしい甘味がひろがります。一方、力づよさが魅力の《ブリュット・グラン・キュヴェ》はピノ・ノワール100%。ふくよかな果実味とゆたかな熟成風味が、こってりとした「鰻」をも包み込んでしまいます。

 

ニギリがうつくしく並んだ「盛り合わせ鮨」も、じつはその配列に、職人の意図が隠れている場合があります。箸をつけるまえに、順序の有無を確認するとよいでしょう🥂✨

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「セミヨン」というぶどう品種

フランス・ボルドーが原産の「セミヨン」。ソーテルヌの甘口、〝貴腐ワイン〟に使用される品種です。凝縮感ある甘味は、完熟ぶどうに貴腐菌が付着することでうまれます。一方で、貴腐化するまえに収穫すると辛口ワインがつくれるという優れもの。

 

《エール・ド・リューセック》は、ソーテルヌの第一級シャトー、リューセックがてがけるセミヨンの辛口ワイン。ぶどうの大半が甘口ワインとなるため、各ヴィンテージ、二・三千本ほどしか生産されない稀少品です。今回は、黄金色にかがやく2002年ヴィンテージを抜栓。濃厚かつオイリーな質感は品種由来。香りは熟した黄桃やジャーマンカモミールが交錯します。この甘い芳香とは対照的に、味わいは極めてドライ。経年による酸も相まって、力づよくシャープな旨味を呈します。合わせる料理は、しっかりと浸かった「しめ鯖」。きわだつ酢香とエッジのきいたワインが一体となり、芳醇な昆布の風味、凝縮された鯖の旨味をひきたてます。

 

甘口から辛口まで守備範囲とするセミヨンは、とても稀有な逸材。セミヨンといえば貴腐ワイン、補助的な品種、といった先入観は、マリアージュの幅をせばめてしまう可能性があるので要注意です⚠️

 

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シャンパーニュの選び方

シャンパーニュを選ぶとき、わたしは「村」で選ぶことが少なくありません。五千以上あるメゾンより、かぎられた「村」に着目した方が、料理に合う一本を見つけやすいからです。

 

たとえば、スペイン産ハモン・セラーノに合わせるなら「リュード」村。石灰質土壌のモンターニュ・ド・ランス地方に位置し、瑞々しくふくよかな果実味と、ほのかなミネラル感あるシャンパーニュを産出します。果実味が豚の甘みを助長し、ミネラル感がそれが引き立てるのは想像にかたくなく、とりわけ個性を感じさせる「栗の花のハチミツ」のようなかぐわしい香りが、ハモン・セラーノの独特の熟成香と絶妙にマッチするのです。

 

料理にあうシャンパーニュ選びは、まず「村」を知ることから。グラン・クリュ17村、プルミエ・クリュ42村の特徴がつかめるようになると、マリアージュの楽しさはいっそう深まります🥂✨

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