未知なるマリアージュの世界へようこそ!

私の超オススメワインをご紹介します🥂🍷✨

オールド・ヴィンテージの魅力

「生産者」「収穫年」「畑」。まったくおなじワインでも、ボトルごとに味の〝個体差〟が大きいのがオールド・ヴィンテージ。その理由は、天然コルクの材質や、保存期間中の温度、湿度、振動、光といったあらゆる要素が熟成に関与しているため。たとえ微差でも条件がちがえば、個体差が生じ、経年が長くなるほど、それがワインの風味として色濃くあらわれるのです。

 

今夜のオールド・ヴィンテージ。一本目はアンバー・ゴールドに輝く《ドン・ペリニヨン1988》。きゅうりのピクルス「コルニッション」を、シェリー酒ヴィネガーで漬けたかのような独特の芳香。まろやかな甘味とコクは、高級焼菓子につかわれるダーク・ブラウン・シュガーのよう。料理はしっとり甘い大阪の「箱寿司」、とりわけ「穴子」の甘みによく合います。つづく二本目。ドイツはヘッセン州ベルクシュトラーセ醸造所の《シュタインコプフ・リースリング1982》。色調は透明感あるオレンジ・ゴールド。ドイツの漬物「ザワークラフト」を一ヶ月漬け込んだような香りと、松脂(まつやに)を彷彿とさせるかぐわしい芳香。味わいは熟成した蜂蜜レモンでつくる、レモンティー。上品な甘酸っぱさと渋みが「小鯛と昆布」の芳醇な旨味を引き立てくれます。

 

個体差のはげしいオールド・ヴィンテージ。一体どんな香りなのか、味なのか。開けてみるまでわからない、緊張感のただよう世界です。しかし想像を超える〝おいしさ〟に出逢ったとき、その感動ははかりしれません。そんな未知との遭遇感、すなわち高揚感こそ、オールド・ヴィンテージの最大の魅力なのかもしれません。

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ネーミングこそブランディング

五千をこえる生産者が、しのぎを削るシャンパーニュ界。そのレッドオーシャンで独自性をアピールし、ほかとの差別化をはかるのは至難の業。そこで大切となるのが、ネーミングです。メゾンの顔であるスタンダードNVのネーミングこそ、ブランディングにおける重要なファクターといえます。

 

なかでも、異彩を放つネーミングがアヤラ。「グラン・レゼルヴ」や「ブリュット・トラデシオン」といった典型的な名があふれるなか、スタンダードNVに《ブリュット・マジュール》を冠するメゾンは《アヤラ》のみ。ぶどう本来の味で勝負するため、どの銘柄もドザージュを極力ひかえるのがメゾンの鉄則。それゆえ、「ブリュット・ナチュール」を連想させる語呂に、センスのよさを感じます。マジュールとは、英語の〝メジャー〟。「低ドザージュ、エレガンス、フレッシュ」というメゾンの基本スタイルをもっとも反映した、語意どおり、アヤラの〝主要〟銘柄です。しかし、わたしが思うに、これがネーミングの真意ではありません。メジャーリーグやメジャーデビューという使い方がされるように、この言葉の根源的な意味は〝一流〟。それをあえて、もっとも生産量のおおいスタンダード品に冠し、レッドオーシャンに挑むアヤラ。自信の現われなのか、それとも自らを奮い立たせているのか。どちらにせよ、メゾンの威信をかけたネーミングであったに、ちがいありません。

 

そんなブリュット・マジュールを、今夜は関西「おでん」といただきます。すっきりとした爽やかな酸が上品な出汁風味をひきたて、タネごとの滋味深い味わいを際立たせます。とりわけ旧エチケット品は、こうばしい麦を彷彿させる焙煎香。くわえて、熟成梅酢のような繊細な酸とまろやかなコク。やさしい甘味の「たまご」と抜群の相性です。

 

「ネーミングセンスが光るメゾンに、ハズレなし」が、わたしの持論。そうした視点でシャンパーニュをセレクトしてみるのも、楽しいものです🥂✨

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「原則」と「例外」

ぶどうの収穫域が狭く限定されるほど、より高品質なワインといえます。これがワイン界の原則。ラベルに記された生産地、「アペラシオン○○コントローレ(通称AOC○○)」がその指標のひとつです。たとえば、「アペラシオン〝村名〟コントローレ」と「アペラシオン〝地区名〟コントローレ」であれば、前者の方が狭域ワインであり、長期熟成に適しているといえるのが原則論です。

ところが、その原則論だけで判断するのは早計です。たとえAOC〝地区名〟のワインであっても、グラン・ヴィンテージや長期熟成を得意とする生産者となれば話はちがってくるからです。

それを物語るのが《シャトー・フォール・ド・ヴォーバン》。AOCオー・メドックの地区名ワインですが、驚異の熟成味をみせる逸品。なかでも《1985》は指折りの秀作年。褪色(たいしょく)こそしているものの、腐葉土、なめし皮の香りはむせかえるほどに濃厚。経年36年とは思えない、豊富なタンニンも残存しています。驚くのはその質感。きわめてなめらか、かつまろやかなタンニン。甘い味噌の「どて焼き」とみごとに調和し、あと味のこってりとした甘味をエレガントな熟成酸があらいながしてくれます。

ワインにかぎらず、なにごとにも「原則」と「例外」があるのが世の常。原則論だけで判断しようとすると、まちがってしまうことも少なくありません。くれぐれもご注意くださいね⚠️

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〝たこシャン〟には、ムニエ主体のシャンパーニュ

旨味に〝苦味〟が加わると、味の奥ゆきがぐっと増し、立体感のあるおいしさに進化します。カレーの隠し味としてビターチョコレートをいれると、コクが格段と深まるように。この効果は、料理とシャンパーニュのマリアージュにおいても例外ではありません。

 

ピノ・ムニエ」主体のシャンパーニュは、品種由来のやわらかな果実味と独特の苦味を兼備。《ジョアネス・リオテ/ブリュット・レゼルヴ》はその典型です。淡いイエローゴールドに、アップルパイを想わせる果実とバター香。まさにシナモンのような苦味が魅力。おすすめは、たこ焼きにあわせる〝たこシャン〟。旨味あるたこ、出汁かおる生地、粉もんのなかでもとりわけ甘いたこ焼きソース。ムニエの苦味でそれらすべてがひきたち、タコ焼きとふくよかなシャンパーニュの絶妙な一体感がうまれるのです。

 

たこ焼きには、ムニエ主体のシャンパーニュ。「もうひとつ」と、つい手がでるマリアージュです🥂✨

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「クリュギスト」にこそ飲んでほしいシャンパーニュ

友人主催のワイン会。ブラインドテイスティングで、わたしを含め、おおくのソムリエが「クリュッグ」とまちがえたシャンパーニュ。それが《アルロー/プルミエクリュ・グランキュヴェ》。

 

酷似するのは、強烈なアーモンド・キャラメリゼ香に、底知れぬ力づよさと分厚み。さらに、巧みなアッサンブラージュと熟成期間の見極めで、毎年、安定したおいしさのNVを生みだす点も共通です。

 

そんなアルローとクリュッグ。じつは「親子丼」と相性抜群のシャンパーニュ。甘辛い味つけ、卵のコク、鶏肉の旨味が、香ばしいシャンパーニュの力づよい旨味とみごとに調和するのです。フレンチの定番、甘塩っぱい旨味の「フォアグラのテリーヌ」に、芳しく力づよい、全粒粉の「パン・ド・カンパーニュ」が添えられているように。アルローには親子丼、親子丼にはクリュッグ。これがわたしの定番です。

 

ただ、合わせ鏡のような両者でも、ひとつ決定的に異なる点が。それは、クリュッグには「クリュギスト」とよばれる、熱烈なファンが存在することです。この独特なよび方は、シャンパーニュ界でもクリュッグ愛好家のみに許されたもの。そんなクリュギストにこそ飲んでほしいシャンパーニュ、「アルロー」。驚くほどの共通点を見出し、アルローファンになることちがいありません🥂✨

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つくり手の特徴を知る方法

生産者のワインの特徴を理解するには、「水平テイスティング」がおすすめ。同一ヴィンテージの〝畑ちがい〟を比較することで、ワインの共通点と相違点がみえてきます。

 

今夜はローラン・ラヴァンテュルーの《シャブリ2014》と《シャブリ・グランクリュ・ヴォデジール2014》を水平比較。両者の共通点は、パイナップルをありありと彷彿させるテイストです。シャブリは極甘の果汁が滴る〝完熟〟パイナップル。ヴォデジールは、ほどよい果肉の硬さと、フレッシュな酸を有する〝成熟〟パイナップルです。一方、相違点は時間経過による変化。抜栓直後からほぼ変化がみられないシャブリに対し、ヴォデジールはどんどん甘味とまろやかさを増していくのです。そして最後には、両者の判別がつかないほど、似かよった味わいに。つまり、どちらのワインも、《ラヴァンテュルー》だとわかる共通の特徴を秘めているのです。

 

そんなラヴァンテュルーのシャブリは、意外にも「釜めし」とよくあいます。甘辛いご飯とワインの絶妙な甘みが、具材の旨味を増幅させるのです。たとえば、刻んだパイナップルを混ぜ込んだ八目釜めし。炊き立ての木蓋をとると、だしやしょう油の芳ばしさとともに広がる、甘酸っぱい、どこかエキゾチックな香り。食欲をそそります。さらに味つきご飯との絶妙な甘味と酸味が、海山の幸を一層ふくよかな旨味へと昇華させるのです。「パイナップル・シャブリ」と「釜めし」。抜群の相性です。

 

今回の「シャブリ」と「グランクリュ・シャブリ」の対比ように、〝ランクちがい〟を飲みくらべることで、両者の共通点と相違点、ひいてはそのつくり手の特徴までわかるようになります。同一年の畑ちがいの「水平テイスティング」、ぜひお試しください🍇

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野菜をもっとおいしく

惣菜市場はいまや十兆円をこえる規模。スーパーやデパ地下には、レストランに匹敵する逸品料理がならびます。健康志向のたかまりもあり、「サラダ」メニーはとりわけ豊富。ドレッシングやトッピングのちがいで、さまざまなバリエーションが楽しめます。きょうはわたしがお薦めする、ワインとサラダをご紹介。

 

◾️シャンパーニュにはシンプルサラダ
みずみずしい生野菜は、さわやかなシャンパーニュと相性抜群。軽快な泡、すっきりとした酸は、野菜の甘味をひきたててくれます。

 

◾️白ワインにはシーフードサラダ
磯の香りと魚介の旨味は、コク旨系の白ワインとよく合います。たとえば《デュブレール/ブルゴーニュ・ブラン・レ・ミルラン2015》。リッチな樽香で、魚介のグリルはいっそう芳ばしく。洋ナシを想わせる濃厚な果実味と、凝縮感あるコク。野菜は苦味がきわだち、エビやホタテは旨味を増幅させます。

 

◾️赤ワインにはアジアンサラダ
個性的なハーブやスパイシーな香辛料は、複雑味ある赤ワインにぴったり。生春巻きと《モスコーネ/バローロ2013》もその一例。ネッビオーロ種の渋みと、チリソースの辛みが食欲を刺激。シャキシャキとしたレタスに、パクチーの甘みとバローロの力づよい旨味が重なると、メインデッシュにも劣らない一品へと昇華するのです。

 

単に「健康によい」からではなく、「おいしい」からこそ、わたしは野菜を積極的に摂っています。そんなわたしにとって毎日の食卓に欠かせないワインが、野菜をもっともおいしくする魔法の〝ドレッシング〟なのです🍷🥂
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