クリュッグやモエ・シャンドンなど、有名なグランメゾンの多くは、ぶどう農家よりぶどうを買い取って、シャンパーニュを醸造する〝NM(ネゴシアン・マニュピュラン)〟という生産者業態です。
一方、〝RM(レコルタン・マニュピュラン)〟はぶどうの栽培から醸造までを一貫して行っている、家族経営などの小規模生産者。
生産者数はRMの方が圧倒的に多いのですが、生産量や出荷量が限られているため、RMのほとんどが稀少性の高いシャンパーニュです。
わたしの敬愛する造り手のひとり、「女性のRM、第一人者」と評されるのが《マリー・ノエル・レドリュ》。彼女は自身をふくめ、たったふたりで畑を管理をしている超小規模の生産者です。自然の恵みを大事にする彼女のフィロソフィーは、培養酵母は使わず、畑の管理(減農薬農法)から、ルミアージュ・デゴルジュマンまで手作業という徹底したこだわりようです。
生み出されるシャンパーニュは、凛とした骨格と、みなぎるパワーがありますが、やはり女性らしいエレガントさとやさしさを兼ね備えている点が最大の魅力といえるでしょう。
そんな彼女のシャンパーニュと、ぜひ合わせたいのが〝甲殻類のビスク〟。《マリー・ノエル・レドリュ》の味わいと、共通するところがあるからです。甲殻類のエキスを最大限に引き出したスープは濃厚かつ力づよく、それをクリームで伸ばすことによって、まろやかなコクとやさしい甘みがスープ全体を包み込んでくれます。
今回は《マリー・ノエル・レドリュ/グランクリュ〝アンヴォネ〟エクストラブリュット》と『甘エビのビスク』のマリアージュ。
甘エビの濃厚な旨味と豊かな香りが、クリーミーでやわらかなヴェールにつつまれながら、口中に広がります。《グランクリュ〝アンボネイ〟》がそのヴェールのすき間に流れ込み、豊満な果実味は甘エビと相まって、その力強さを発揮します。彼女の品格をあらわすかのごとく、キリッとした美しい酸味と、わずかな苦味が、甘エビ/クリーム/ピノ・ノワールを巧みにからませながら、傑作の三重奏を奏でるのでした👏