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長い眠りから目覚めた、1982年の白とロゼ

ワインづくりにおいて、このうえなく天候に恵まれ、最高品質のブドウが収穫できた年を「あたり年」と呼びます。ヴィンテージ・チャートは生産地で異なりますが、シャンパーニュ地方にとっての1982年は、空前絶後のあたり年といえるでしょう。


しかしながら、醸造からおよそ40年、リリースからでも30年以上が経ったいま、そのポテンシャルを体感できるヴィンテージ・シャンパーニュは多くはありません。そんな希少性の高いシャンパーニュこそ、いわずと知れた≪ドン・ペリニヨン≫です。いまでも抜栓時にはコルクが音を立てるほどの〝若々しさ〟や〝瑞々しさ〟があるのです。


ところで、なぜ、ドン・ペリニヨンは他のシャンパーニュと違って〝へたれない〟のでしょうか。なぜ、これだけの経年変化に耐えうるのでしょうか。


それはずばり、酵母の生命力です。〝へたれない〟とは、泡の持続性をさします。ご存知のとおりシャンパーニュの炭酸は、瓶内二次発酵によるもの。ワインに酵母と糖分を加えることでおこる現象です。酵母が糖を食べ生き続けるかぎり、アルコール発酵が進み、二酸化炭素を発生させるのです。つまり、ドン・ペリニヨンが長年使い続けている「酵母菌」こそ、他のメゾンとの抜本的な違いではないでしょうか。同ヴィンテージの白とロゼの同時抜栓で、その歴然たる酵母の底力を目のあたりにすることができます。


オレンジゴールドに輝くのは≪白1982≫。香りはパンドミーのトースト香が支配し、その背後に最上級のハチミツと熟成した黒酢とナッティー香。舌のうえでは、最後の力をふりしぼるかのごとく微細に震える極小の泡つぶを、しっかりと感じとることができます。甘味、酸味、苦味の絶妙なバランスが、限りなくやさしくて、まるい味わいを醸成します。


一方、ブラッドオレンジカラーは≪ロゼ1982≫。グラスに注ぐと、37年の歳月を微塵も感じさせないほど、勢いよく美しい泡が立ち昇ります。香りのなかに、芳ばしさ、甘み、酸みがとけこみ、味わいは泡同様にとてつもなくエネルギッシュで躍動的です。重厚感のある果実味がしっかりと残存し、余韻までぶれない苦みは圧巻でした。


たしかに、あたり年とそうでないヴィンテージの差は少なくありません。しかしそれ以上に、あらためて「シャンパーニュの耐久力は酵母で決まる」ということをドン・ペリニヨンから学んだひとときでした。

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