未知なるマリアージュの世界へようこそ!

私の超オススメワインをご紹介します🥂🍷✨

微差に気づかせてくれる豆腐

創業わずか40年で、生産量フランス第一位となった「ニコラフィアット」。グラン・メゾンならではの、キュヴェの多さが特徴です。定番の《ブルーラベル》と《ホワイトラベル》の違いは一年ほど熟成期間が異なるだけです。《ブルーラベル》《ホワイトラベル》ともに、淡いゴールドカラー。ほのかに蜂蜜トーストの香りを放ちます。交互に飲み比べても、香りや風味の違いはわかりにくいのですが、この微差に気づかせてくれる〝引き立て役〟が豆腐です。


とりわけ〝十勝(とかち)〟の恵みを生かした有機栽培の丸大豆と天然のにがりだけでつくる豆腐をいただくと、《ブルーラベル》には〝甘み〟が、《ホワイトラベル》には〝苦味〟が、浮かびあがるから不思議です。同じような香りや風味をもつ料理と合わせると、それらと呼応するかのごとく、潜在的シャンパーニュの特徴が何倍にもなってふくらむのかもしれませんね🍾🥂

f:id:hrm628:20190530043742j:image

🍇ピノ・ムニエ主体のシャンパーニュ

今回ご紹介するシャンパーニュは《ルアレ・デボルド/ブリュット》。ピノ・ムニエ67%とピノ・ノワール33%の黒ぶどうのみでブレンドされたブラン・ド・ノワールです。ピノ・ノワールに比べ、ピノ・ムニエという品種は、味を整える〝スパイス〟的な役割を担うことが多いのですが、このシャンパーニュピノ・ムニエを主体とする稀有なシャンパーニュのひとつです。その味わいは上品かつエレガントなうえ、黒ぶどう特有のコクとふくよかさを十二分に堪能できます。


シャンパーニュ地方において、ピノ・ムニエがもっとも多く栽培される地域は、ヴァレ・ド・ラ・マルヌという地区です。そのヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区の第一級のシャンピヨン村に居を構える生産者であるため、品種を知り尽くしたピノ・ムニエブレンド比率が高くなるのもうなずけます。


このシャンパーニュに合わせるのは、鶏や豚のさまざまな部位を混ぜて、蒸し焼きにするパテ・ド・カンパーニュ。しっとり、ぎゅっと凝縮された肉の濃厚な旨味が魅力です。


《ルアレ・デボルド》は、果物のコンフィチュールのようなやさしい甘み、穀物酢をイメージするやわらかな酸、そしてかすかにピリっとするような辛さがあります。パテ・ド・カンパーニュに添えてあるブルーベリーソースやマスタードのように、このピノ・ムニエが多く含まれるシャンパーニュそのものが〝スパイス〟となって、味のアクセントになり、深みを与えてくれるのです🍾

 

f:id:hrm628:20190525170444j:image

🍷ワインの産地とおなじ郷土料理を合わせる

豆好きのわたしにとっては、南仏の「カスレ」は定番料理。白いんげん豆と肉の煮込み料理です。あっさりとした大手亡(おおてぼう)豆でつくることで、肉やトマトとも、よくなじみ、味わいが深まります。

 

「ワインの産地とおなじ郷土料理を合わせる」がマリアージュの基本ですが、カスレには南仏(ラングドック=ルーション)でもとくに高品質の、《ミネルヴォア・ラ・リヴィニエール》のワインがよく合います。温暖な土地ですが、モンターニュ・ノワール(黒い山)と呼ばれる山からの冷風のおかけで、濃厚だけどくどくない、すっきりとした赤ワインに仕上がるからです。

 

なかでもとりわけエレガントな《ドメーヌ・ド・トロミエス》。カシスのリキュールやブルーベリーのジャムのような濃厚な果実味で、タンニンも強めですが、ワインビネガーのようなまるみのある酸と、ほのかなメンソール系の爽快感が、ホクホクとした豆のやさしい甘みと調和します😊🍴

 

f:id:hrm628:20190523053906j:image

時間がないときは、カレラで「黄金の方程式」

わたしが提唱する「黄金の方程式」とは、鮨ネタとワインの色を合わせるというマリアージュの方程式です。たとえば、赤身・中トロ・大トロ等の赤系鮨には赤ワインを、ホタテ・ツブ貝・ホッキ貝等の白系貝類には白ワインをといった合わせ方です。


しかしあまり時間を確保できないときは、カリフォルニアワインがオススメ。ブルゴーニュワインと違って、抜栓直後よりそのおいしさを堪能することができるからです。


ブルゴーニュの特級ドメーヌでワイン造りを学び、カリフォルニアの地で、徹底的な分析と研究のもと生産される《カレラ》。その果実味はたくましいほどに力づよく、筋肉美のようにキュッとひきしまっています。鮨にフルーティーなワインを合わせると魚の生臭みを助長すると嫌煙されがちですが、カレラの凝縮された果実味ならその心配はなく、ネタとシャリとの一体感を強め、うまみのつよい鮨に昇華させてくれるのです。


今回は、稀少な単一畑もの《ピノ・ノワール・ド・ヴィリエ2010》と、優良年の《シャルドネ・セントラルコースト2015》。ピノ・ノワールの乳酸発酵したような甘みあるコクが、鮪(まぐろ)の力づよい味わいと、濃厚な脂身を包み込むことで、まったり舌全体に吸いつくような旨みが生まれます。そのコントラストを赤身、中トロ、大トロで楽しむことができます。一方、貝のミネラルがプラスされて新たなバランスに整った白ワイン。サクサクとネタが噛み切られらる度にあふれる、淡白で上品な貝のエキスを、太陽をふんだんに浴びた厚みあるシャルドネが受け止め、旨みを鮮明に浮かび上がらせるのでした。


鮪系にはピノ・ノワール、貝類にはシャルドネ。鮨をさっと食したいときは、カレラでの「黄金の方程式」を一度お試しくださいね🍣🥂✨

 

f:id:hrm628:20190520043446j:image

 

ポテトにポメリー🥔

《ポメリー/ブリュット ロワイヤル》の特筆すべき点は、マスカットのさわやかさと、高級ハチミツの上品で洗練された甘みとコクが、超絶細やかでクリーミーな泡とともに口いっぱいに広がることです。


ビシソワーズ(ポテトの冷製スープ)に合わせて《ポメリー/ブリュット ロワイヤル》をいただくと、シンプルテイストの後に、ハーブを効かせたベイクドポテトのようなはなやかな香りと濃いうまみを感じます。


おそらく、《ポメリー/ブリュット ロワイヤル》特有のながい余韻のあとに訪れる〝ピンクペッパー〟のような独特の風味が、じゃがいもの素朴な味をやさしく包みこみながら、ビシソワーズに変化を与え、一段とおいしくさせてくれるのでしょう。ポテトチップスに合わせても、まったく同様のマリアージュが再現できたからです。


ポテトにポメリー。頭の片隅にでも置いておいてくださいね🥂🍾

 

f:id:hrm628:20190515043708j:image

朴訥とした透明感

ブルゴーニュ唯一の日本人醸造家、仲田晃司氏の《ルーデュモン/ブルゴーニュ・ブラン2013》。淡いイエローゴールドで、香りはほのかにアカシアの蜂蜜。テイストはとても個性的です。完成したばかりのコンクリート建造物のような冷たさ、ほこりっぽさ、シンナー、鉄カビ臭…。くちに含むとするどい酸が突き刺さり、それは極寒日のトゲトゲしい痛みにすら感じます。時間が経っても、まるくならず、軸がぶれないのも特徴です。


シェフがこのワインに合わせてくれたのは、「無色のガラス皿」。いうまでもなく、共通点は〝朴訥(ぼくとつ)とした透明感〟です。ワインも料理も通常より温度が低い、というわけではありませんが、不思議なことに、ガラスに盛られた生ハムや夏野菜は、ワインと共鳴するかのように塩味とミネラル香をかもしだし、素材の味を研ぎ澄ませてくれるかのようでした。


《ルーデュモン/ブルゴーニュ・ブラン》。とりわけ、〝朴訥とした透明感〟を感じさせる2013年がわたしのお気に入りです✨

 

f:id:hrm628:20190513043419j:image

キャビアに合うシャンパーニュ

キャビアには〝辛口シャンパーニュ〟がよく合うといわれています。しかし、新鮮で上質なキャビアには、熟成シャンパーニュの方が断然合うとわたしは思っています。理由は、「エクストラ・ブリュット」や「ノン・ドザージュ」などの酸がつよいシャンパーニュだと、せっかくの繊細なキャビアの風味が消されてしまうからです。これはもったいない…。

 

そこで、わたしがオススメするのは《サン・J・プリエスト》。このシャンパーニュは、やわらかく優しい泡と、甘酸っぱい芳醇な熟成香が特徴です。20年近く瓶内熟成させると、淡いべっ甲色の、それは、それは美しい輝きを放ちます。まるみを帯びたまろかな酸と、とろけるようなキャビアのピュアで軽やかな旨みが、絶妙なコントラストを描くのです。

 

このように、なめらかな舌触りとともに、繊細な風味を兼ね備えているキャビアには、辛口シャンパーニュではなく、〝20年プリエスト〟のようなまったりとした熟成シャンパーニュ方がよく合います。セオリーは大切なことですが、一方で常識を疑うことも、感性を高めるためには必要なことかもしれませんね。

 

f:id:hrm628:20190510043642j:image