似て非なる、アナゴとウナギ。類似した見た目でも、生体と味わいは歴然の差です。
アナゴもウナギも、ともに海でふ化。アナゴはそのまま海で生息する「海水魚」であるのに対し、ウナギは川をのぼるため、「淡水魚」に位置づけられます。
また、旨みのモトとなる構成アミノ酸は、種類も含有量もほぼ同一。味わいの差はおそらく、双方で大きくことなる〝脂質量(脂ののり方)〟からでしょう。アナゴはあっさり、ウナギはこってり、と表現されるように、ウナギの脂質量はアナゴの2倍に相当します。ウナギは天ぷらやフライといった揚げ物にはせず、蒲焼きが定番であるのにも頷けます。
これだけ明瞭な差があれば、合わせるシャンパーニュにもぜひ変化をつけたいもの。わたしのオススメは、アナゴには白のシャンパーニュ、ウナギにはロゼ・シャンパーニュです。白のキレある酸と繊細な旨みは、上品なアナゴを引き立て、ロゼが有する複雑みがウナギの旨みを増幅させ、より濃厚で力づよい一貫に。
その際、おなじ造り手の白とロゼが揃えば、なおのこと愉しめます。今回のシャンパーニュ≪タイユヴァン≫は、ドゥーツがパリの名門レストラン「タイユヴァン」だけにつくる特注品。白は酸がきわめて繊細で線が細いため、アナゴはタレではなく塩。ふわっと崩れるようなやさしい甘みと、塩、シャンパーニュは至極のバランスをなします。ロゼの特徴は口にふくんだ瞬間の、白桃のようなふくよかな果実味。こちらは甘辛ダレと融けあって、濃厚なウナギの脂がより濃密に。山椒ではなく、パンチあるゆず胡椒がアクセントとなって全体を引き締めます。
鮨ダネの脂質量を意識することで、マリアージュの楽しみ方は格段とひろがります🥂