未知なるマリアージュの世界へようこそ!

私の超オススメワインをご紹介します🥂🍷✨

ヴァレ・ド・ラ・マルヌの飲み比べ

シャンパーニュ地方のおもな銘醸地は、「コート・デ・ブラン」「モンターニュ・ド・ランス」「ヴァレ・ド・ラ・マルヌ」の三地区です。それぞれの地区に主力となる一品種が存在し、おなじ地区のシャンパーニュを飲み比べると、品種の特徴やその地区のテロワールを学べるだけでなく、造り手の個性がきわだち、食事がよりいっそう楽しくなります。

今回はピノ・ムニエの名産地「ヴァレ・ド・ラ・マルヌ」の飲み比べ。≪ディディエ・ショパン≫とアンリ・ブランの≪ルイ・ドール≫です。ともにピノ・ムニエ特有のふくよかな果実味がベースとなり、≪ディディエ・ショパン≫はブラン・ド・ノワールならではの厚みとわずかな苦み、≪ルイ・ドール≫はシャルドネの気品ある酸で引き立つ、やさしい甘みが特徴的。≪ディディエ・ショパン≫はウニ和牛寿司の濃厚な旨みと相性がよく、≪ルイ・ドール≫にはキャビアを加味することで甘、酸、塩味の立体感あるマリアージュが楽しめます。

シャンパーニュも肉も同じ。世界に冠たる神戸牛と〝ひとくくり〟にするのではなく、押部谷や櫨谷の「西区」や六甲山麓の「北区」などの〝肥育地〟を調べることで、ブランド牛の楽しみ方も変わります。ぜひ「地方」だけでなく、「地区」も意識しながら、畜産農家のこだわりや牛の個性を感じてくださいね🐃

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食材の微差を意識する

「海のダイヤモンド」とよばれる、貴重なキャビアチョウザメの卵を塩づけにしたもので、おもにベルーガ、オセトラ、セヴルーガの3種類のチョウザメから採取されます。


なかでも、わたしのお気に入りはセヴルーガ。もっとも小型のチョウザメで、卵も極小。ソフトな舌触りと繊細な味わいが特徴です。それゆえ、合わせるシャンパーニュにはコクの圧みとガス圧の強さが求められます。くちの中で、セヴルーガの一粒一粒が「米のおどり炊き」のように弾け、風味も格段と増すからです。


最適な一本が≪ポール・ベルトロー/キュヴェ・レゼルヴ≫。厚みとガス圧に加えて、乳製品のようなコク、ミネラリーな余韻がセヴルーガをより上品でエレガントな味わいへと導きます。


キャビアひとつとっても、さまざまな種類があります。食材の微差を意識するようになると、マリアージュの幅もひろがるはずです🥂✨

 

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極辛口のシャンパーニュで楽しむ、ウニの食べ比べ

「ウニ」とひとくちに言っても種類、採取場所、季節などにより、その味わいは多用性をもちます。複数の種類を食べ比べ、自分の好みを見つけるというのもウニの楽しみ方のひとつでしょう。


その際、〝極辛口〟のシャンパーニュを合わせることをお勧めします。ウニ独特の甘みをより濃厚に感じとることができ、味わいの微差も際立つからです。さらに、ウニの色に合わせてロゼと白のシャンパーニュを変えていただくと、そのマリアージュは一層深みをまします。今回に関していうと、濃いオレンジ色のエゾバフンウニには《アレクサンドル・プネ/エクストラ・ブリュット》のロゼ、淡い黄色の福島県藍島(あいのしま)産や淡路島由来(ゆら)の赤ウニには白、という合わせ方です。


複雑で厚みあるロゼは、剣山(花留め)が舌にのっかるような刺激とともに、広がる酸が特徴的。エゾバフンウニの凝縮感がありつつ、すっと抜けるような濃厚な甘味が舌に重なるように染み入ります。一方、ブリオッシュ風味が際立つ白。クリーミーさのなかにサワークリームのような爽やかさも兼ね備え、すっきりとした甘みの由良の赤ウニを引き立てます。


一年を通し市場に出回っているウニも、旬の漁場は2週間ほどで移行します。数あるウニの産地食べ比べを、ぜひ極辛口のシャンパーニュとともにお楽しみください🥂

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蔵出しワインの魅力

ブルゴーニュの「古酒の神」、と称させるのが≪ルモワスネ≫。このドメーヌのオールド・ヴィンテージには、経年数からは考えられないほどの、若々しさが残っています。


ではなぜ、ルモワスネのワインは古酒でも若さを感じるのでしょう。

そのわけは「蔵出し」です。蔵出しワインとは、たとえ何十年かかっても味わいのピークをむかえるまで、ドメーヌのもとで保管されたワインのこと。生産者にとって場所の確保、手間、コストの負担は尋常ではありませんが、ワインは至高の熟成プロセスをふみます。


蔵出しでないワインは、だれが、どこで、どのように保管していたかが不明瞭で、古いヴィンテージほど品質劣化のリスクが高まります。一方蔵出しワインは、出荷後も安全かつ最短最速の輸送ルートで販売店までとどくので安心です。


今回の《ニュイサンジョルジュ・1erレザルジリエール 1989》は、蔵出しの逸品。枯れた色調やエッジの色落ちからは〝30歳〟を感じつつも、口にふくんだ瞬間にそれが吹っ飛ぶ瑞々しさと艶やかさ。乳酸系の熟成味と若々しい果実味とのバランスが絶妙です。但馬牛のヒレステーキと合わせると、葉巻や甘草などのアロマが肉の芳ばしさを引き立て、ジューシーなピノ・ノワールが、旨みあふれる肉汁を包み込むかのよう。


蔵出しオールド・ヴィンテージは、生産者が目先の利益にとらわれず、何十年にもわたって愛情を注ぎつづけた賜物です。いつにもまして、感謝の念が湧いて参ります。

 

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鮨ダネの〝脂質量〟を意識せよ

似て非なる、アナゴとウナギ。類似した見た目でも、生体と味わいは歴然の差です。


アナゴもウナギも、ともに海でふ化。アナゴはそのまま海で生息する「海水魚」であるのに対し、ウナギは川をのぼるため、「淡水魚」に位置づけられます。


また、旨みのモトとなる構成アミノ酸は、種類も含有量もほぼ同一。味わいの差はおそらく、双方で大きくことなる〝脂質量(脂ののり方)〟からでしょう。アナゴはあっさり、ウナギはこってり、と表現されるように、ウナギの脂質量はアナゴの2倍に相当します。ウナギは天ぷらやフライといった揚げ物にはせず、蒲焼きが定番であるのにも頷けます。


これだけ明瞭な差があれば、合わせるシャンパーニュにもぜひ変化をつけたいもの。わたしのオススメは、アナゴには白のシャンパーニュ、ウナギにはロゼ・シャンパーニュです。白のキレある酸と繊細な旨みは、上品なアナゴを引き立て、ロゼが有する複雑みがウナギの旨みを増幅させ、より濃厚で力づよい一貫に。


その際、おなじ造り手の白とロゼが揃えば、なおのこと愉しめます。今回のシャンパーニュ≪タイユヴァン≫は、ドゥーツがパリの名門レストラン「タイユヴァン」だけにつくる特注品。白は酸がきわめて繊細で線が細いため、アナゴはタレではなく塩。ふわっと崩れるようなやさしい甘みと、塩、シャンパーニュは至極のバランスをなします。ロゼの特徴は口にふくんだ瞬間の、白桃のようなふくよかな果実味。こちらは甘辛ダレと融けあって、濃厚なウナギの脂がより濃密に。山椒ではなく、パンチあるゆず胡椒がアクセントとなって全体を引き締めます。


鮨ダネの脂質量を意識することで、マリアージュの楽しみ方は格段とひろがります🥂

 

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長い眠りから目覚めた、1982年の白とロゼ

ワインづくりにおいて、このうえなく天候に恵まれ、最高品質のブドウが収穫できた年を「あたり年」と呼びます。ヴィンテージ・チャートは生産地で異なりますが、シャンパーニュ地方にとっての1982年は、空前絶後のあたり年といえるでしょう。


しかしながら、醸造からおよそ40年、リリースからでも30年以上が経ったいま、そのポテンシャルを体感できるヴィンテージ・シャンパーニュは多くはありません。そんな希少性の高いシャンパーニュこそ、いわずと知れた≪ドン・ペリニヨン≫です。いまでも抜栓時にはコルクが音を立てるほどの〝若々しさ〟や〝瑞々しさ〟があるのです。


ところで、なぜ、ドン・ペリニヨンは他のシャンパーニュと違って〝へたれない〟のでしょうか。なぜ、これだけの経年変化に耐えうるのでしょうか。


それはずばり、酵母の生命力です。〝へたれない〟とは、泡の持続性をさします。ご存知のとおりシャンパーニュの炭酸は、瓶内二次発酵によるもの。ワインに酵母と糖分を加えることでおこる現象です。酵母が糖を食べ生き続けるかぎり、アルコール発酵が進み、二酸化炭素を発生させるのです。つまり、ドン・ペリニヨンが長年使い続けている「酵母菌」こそ、他のメゾンとの抜本的な違いではないでしょうか。同ヴィンテージの白とロゼの同時抜栓で、その歴然たる酵母の底力を目のあたりにすることができます。


オレンジゴールドに輝くのは≪白1982≫。香りはパンドミーのトースト香が支配し、その背後に最上級のハチミツと熟成した黒酢とナッティー香。舌のうえでは、最後の力をふりしぼるかのごとく微細に震える極小の泡つぶを、しっかりと感じとることができます。甘味、酸味、苦味の絶妙なバランスが、限りなくやさしくて、まるい味わいを醸成します。


一方、ブラッドオレンジカラーは≪ロゼ1982≫。グラスに注ぐと、37年の歳月を微塵も感じさせないほど、勢いよく美しい泡が立ち昇ります。香りのなかに、芳ばしさ、甘み、酸みがとけこみ、味わいは泡同様にとてつもなくエネルギッシュで躍動的です。重厚感のある果実味がしっかりと残存し、余韻までぶれない苦みは圧巻でした。


たしかに、あたり年とそうでないヴィンテージの差は少なくありません。しかしそれ以上に、あらためて「シャンパーニュの耐久力は酵母で決まる」ということをドン・ペリニヨンから学んだひとときでした。

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土瓶蒸しとワインの共通点

土瓶蒸しとワイン。両者に共通するのは、〝土〟によっておいしさがもたらされる点です。

 

土鍋が料理をおいしくすることは広く知られていますが、材質がおなじ土瓶もまたしかり。土に含まれる小さな気泡によって遠赤外線効果がうまれ、沸かしたお湯はまろやかに、調理食材はじっくり中まで加熱され、旨味が増します。

 

一方、ワインのおいしさが土の影響をうけていることは自明。ぶどうの木は水分を求めて深く根をはるため、表層部だけでなくその土地の地層全体がテロワールに反映されます。

 

そんな土瓶蒸しとワインは、やはり相性のいい取り合わせ。とくに松茸の土瓶蒸しに、およそ20年のメルキュレ・ルージュを合わせるのが、わたしのお気に入りです。ブルゴーニュ地方、コート・シャロネーズ地区に位置するメルキュレ村は、石灰質と粘土質の土壌からなり、果実味、タンニン、ミネラル感の強いピノ・ノワールを産出します。インパクトのあるピノ・ノワールは、早飲みより熟成させることでその魅力が開花。一般的には数年~10年が飲み頃といわれていますが、繊細な松茸にはもうすこし長めに熟成したメルキュレの方がよく合います。

 

今回は《1997年》の《アンリ・ド・ヴィラモン》を抜栓。ピノ・ノワールの枯れ感がちょうどキノコや土のようなニュアンスで、松茸の土瓶蒸しには最適の熟成具合です。経年変化でまるみを帯びた酸は、松茸と出汁の旨みをいっそう上品に引き立て、鼻からぶわっと抜け広がるその風味に、心身が満たされます。

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