未知なるマリアージュの世界へようこそ!

私の超オススメワインをご紹介します🥂🍷✨

母の大好きなマリアージュ

春の風物詩である、駿河湾の「桜えび」。乾燥ものは年中ありますが、〝生〟は二ヶ月ほどの漁の解禁中にのみ、わずかに流通する稀少品です。そんな生の桜えびを、秋にも食せることをご存知でしょうか。漁獲期が一年を通して春と秋の二度、訪れるのです。


わたしの秋の楽しみが、さっとソテーした秋桜えびのリゾットに、≪エミリアン・ジレ/ヴィレ・クレッセ・カンティーヌ≫を合わせること。このワインの特徴は、過熟と貴腐化したぶどうが使用されている点です。とろりとした質感と黄金の輝きはその恩恵。ふくよかな果実味がもたらす上品な甘みと、ふっくらとした桜えびの旨みとコクが抜群の相性です。フュメドポワソンとパルメジャーノで仕立てたもち麦のリゾットが、さらにこのマリアージュのおいしさを引き立ててくれるのです。


「これ大好き!」と目をキラキラさせて喜んでくれた、母イチオシのワインと料理。一年に一度、母が旅立った季節になると、思い出とともにこのマリアージュをわたしは楽しんでいます🦐🍽

 

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歴史を変えたヴァランドロー

ボルドー地方に彗星のごとくあらわれた≪シャトー・ヴァランドロー≫。保守的かつ閉鎖的なボルドーの世界において、超新参者のヴァランドローがトップブランドに踊りでたのはなぜでしょうか。


こたえは明快。ヴァランドローが〝ボルドー〟の地で、カベルネ・フランを主役にした極上ワインをつくってしまったから。これは、まさに「パラダイムシフト」。パラダイムシフトとは、それまで当然だと思われていたルールや価値観が覆され、劇的な変化がおとずれること。ボルドー地方といえばカベルネ・ソーヴィニヨンカベルネ・フランといえばロワール地方。この常識を覆し、傑作ワインを生んだのです。


そんな革新的なヴァランドローには、低温調理された革新的なフォアグラ料理を合わせたい。最高級シルクのようになめからなヴァランドローと、自立できないほどに柔らかなフォアグラとの融合は、至高の幸福感をもたらします。まさに、2002年のヴァランドローは今が飲みごろ。みずみずしく濃厚な果実味はプルーンや黒蜜のような贅沢な甘み。醤油粕(しょうゆかす)と低温調理されたフォアグラは極上テクスチャーに仕上がり、閉じ込められていた芳醇な旨みが、濃密なヴァランドローよって封切られ融け合うのです。カベルネ・フランの青くささと醤油の芳ばしさは、絶妙なアクセントとなって革新的マリアージュをひき立ててくれました。


伝統的な社会に風穴をあけるには、業界の常識や固定概念にとらわれない、チャレンジングスピリットが大切。そんな素敵な考え方を、ヴァランドローはいつもわたしに気づかせてくれます。

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芳醇なコムギが香る、犬鳴ポーク

大阪唯一のブランド豚、犬鳴(いぬなき)ポーク。ほかの豚肉にはない、格別のおいしさがあります。


そのヒミツは、たぐいまれな飼料。一般的には輸入トウモロコシなどの穀物飼料がおおいなか、犬鳴ポークは地元であまった食パンなどの、小麦食品が餌としてあたえられるのです。どんぐりを食べて育つイベリコ豚に独特の風味があるように、パンを食べて育った犬鳴ポークには、パンドミーをトーストしたような芳ばしさと、ミルキーな甘みを感じます。


今回は、この犬鳴ポークをパテ・ド・カンパーニュに。合わせるべくシャンパーニュは≪エルベール・ボーフォール/ブリュット・ロゼ・グランクリュ≫がおすすめです。このロゼの最大の特徴は、フレッシュな赤いベリーを想わせる香り、酸、旨みが、ファーストアタックから余韻にいたるまで終始主張している点。さっくり焼けたスコーンにクロテッドクリームと苺のコンフィチュールが添えてあるかのごとく、犬鳴ポークとの相性は抜群です。


関西がほこる犬鳴ポークと、エルベール・ボーフォール。アフタヌーンティーのような、優雅なひとときを演出してくれるマリアージュです✨✨

 

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「炙りトロしゃぶ」のススメ

上質の肉を直火で芳ばしく炙った、炙りトロしゃぶ。よりおいしくいただくために、今回は3つの秘けつをご紹介します。

 

【その1】部位はリブロースがおすすめ

赤身とサシのバランスがよく、身質がやわらか。脂もしつこくありません。

 

【その2】食べる直前に、皿上で勢いよく30秒炙る

脂が溶けてトロトロになったら、その肉汁を逃さないよう、ただちにほうばりましょう。

 

【その3】ひときわ苦みのつよい、シャンパーニュと食す

肉の芳ばしさと相まって、脂の濃厚な甘みがひきしまります。すると肉全体の味わいが洗練され、コクと甘みの輪郭がはっきりと浮かびあがるのです。おすすめシャンパーニュは、≪J.M.ゴビヤール/トラディシヨン・ブリュット≫。その苦みは焦げたトーストのように強烈で、炙りトロしゃぶには、うってつけの一本です。

 

カセットボンベと器具ひとつで、手軽にできる肉の炙り。ご家庭やバーベキューで楽しむ機会があれば、この3つの秘けつを思い出してくださいね🔥🥩🥂✨

 

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ブラン・ド・ブランのようなブラン・ド・ノワール

シャンパーニュには、黒ぶどうだけで造られるブラン・ド・ノワール、白ぶどうだけのブラン・ド・ブラン、そして黒と白のブレンドものがあります。なかでも、ブラン・ド・ノワールは黒ぶどうの厚みあるコクとしっかりとした骨格が特徴で、シャルドネのキレある酸と繊細なフィネスが特徴のブラン・ド・ブランとは対象的な味わい。

 

そのブラン・ド・ノワールをとても個性ゆたかに仕上げるのが、年間生産量わずか6万本の小規模生産者、≪ポール・ルイ・マルタン≫です。彼らのブラン・ド・ノワール≪ブジー・ブリュット≫は、黒ぶどう100%でありながら、対極のブラン・ド・ブランの味わいも楽しめるという、稀代のシャンパーニュ。抜栓直後はブラン・ド・ブランのエクストラ・ブリュットとまちがえてしまうほどの酸が効いた華やかな辛口ですが、30分も経たないうちにブラン・ド・ノワール特有の厚みとコクがあらわれます。

 

グラン・クリュ、ブジー村といえば肉厚で力づよさが魅力のピノ・ノワール。脂がのったサンマの刺身とは抜群の相性です。抜栓直後は、刺身をしょう油で。ミネラリーな透明感と柑橘系の酸と苦みで、すだち醤油のような風味が生まれ、さっぱり感を楽しめます。30分後には、肝醤油にチェンジ。肝の苦みとシャンパーニュの深みあるコクが、濃厚に絡みあって、サンマの脂の旨味を包み込んでくれるからです。

 

1本でブラン・ド・ブランとブラン・ド・ノワールを楽しめるポール・ルイ・マルタン。ちょっぴり得した気分に浸れます🍾🍾

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ちびちび〝熟成〟呑みのススメ

旬の肴(さかな)で、ちびりちびりとやる晩酌。凛とした雰囲気の割烹では、銘酒だけでなく、ワインも仲間にいれてほしいものです。


とりわけ、時間をかけてゆっくり愉しむには〝熟成〟ワインがオススメ。フレッシュなものに比べて、穏やかかつ柔らかな味わいの熟成ワインが、刺激が少なく胃にも心にもやさしいからです。


たとえば、ジャカールが手がける《リッツ・ブリュット》の熟成シャンパーニュ。まろやかに熟した果実味にすっかり溶け込んだ微細な泡。さっと塩茹でされた新鮮なイワシを合せると、磯の香りが繊細な泡とともに広がり、ふっくらとしたイワシシャンパーニュの旨みがやさしく舌に沁みいります。


同時抜栓なら熟成シャブリを。《ドメーヌ・ジャン・コレ/シャブリ・1erクリュ・モンマン》はステンレスタンク使用のため、《2001年》といえど酸が主張しています。コンクリートや屋根裏を彷彿とさせる個性豊かな風味が、薬味のようにアクセントとなり、丸みをおびた酸がイワシの苦みと旨みを引き立ててくれるのです。


熟成ワイン特有の〝琥珀(こはく)色〟は、銘酒にはない世界観。目でも楽しめる、ちびちび呑みのススメでした🐟🥂✨

 

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〝キンキン〟から〝常温〟へのプロセスを楽しむ

グランクリュシャンパーニュは〝常温〟でも楽しめます。なぜなら、温度が上がることで、それまで秘めていた〝顔〟があらわれるからです。


まず、たくさんの氷が入ったワインクーラーで5℃前後まで冷やし、抜栓。グラスに注いだ後、ボトルをワインクーラーに戻さずテーブルに置いておく、というのがわたし流です。温度上昇とともに変化する、泡の状態、香り、味の広がりが楽しめます。


《シャルル・ミニョン/ブリュット・ロゼ・グランクリュ》であれば、12度前後になったころの、間人蟹(たいざがに)とのマリアージュが絶品。チャーミングな赤い果実香は、甘さを増しつつ、エレガントな芳香に。ザラッと舌に残った苦みと渋みはおだやかになり、ワイン全体がガラス玉のように、まるく美しさを帯びます。そんなシャルル・ミニョンは、カニの芳醇な香りを助長し、洗練された上品な甘みを、濃厚で深みある磯の旨みへ昇華させてくれます。


上質なシャンパーニュほど、温度変化によってみせる〝顔〟はさまざま。温度を意識することで、シャンパーニュとの向き合い方、楽しみはさらに広がります🥂

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