ワインには「飲み頃」というものがあります。飲み頃とは、味と香りが〝ピーク〟に達する時期のこと。リリース後すぐに楽しめるワインもあれば、数十年かけてピークをむかえるワインもあります。
今回はそんな経年変化が楽しめるボルドー、《シャトー・ムーラン・ナヴァン1998》。存続するシャトーですが、1998年はかつての生産者による稀少なヴィンテージ。その色合いは、くすんだレンガ色でエッジには透明感。芳香はプルーンにカカオ。くわえて、腐葉土やなめし皮といった熟成香がかおります。経年によるひかえめな果実味、やわらかく繊細な酸、シルクのように滑らかなタンニンが一体化され、まさに〝いま〟が飲み頃。カベルネ由来の〝青っぽさ〟も相まって、バベットステーキの力づよい旨味がいっそう際立ちます。
どんなワインも最高のタイミングで抜栓したいもの。ピークに〝であった〟ときの感動は、筆舌に尽くしがたいものです。そんな千歳一隅の出会いこそ、わたしがワインに魅了される、いちばんの理由なのです🍷🥂✨