未知なるマリアージュの世界へようこそ!

私の超オススメワインをご紹介します🥂🍷✨

アペリティフのすすめ

フランスでは夕暮れとともに、アペリティフを楽しむ時間が訪れます。アペリティフとは直訳すると「食前酒」ですが、広義では食前酒を楽しむひとときそのものを意味します。
この風習は、18世紀末の貴族社会からはじまり、やがて階級を超えて国民全体に広がりました。いまやフランス人にとってアペリティフは単なる食前酒ではなく、会話を促す重要な〝儀式〟であり、友情を深める親交の場としての役割を担っています。

今夜は、幼なじみとの食事会。選んだアペリティフは、「ヴーヴ・フルニ・エ・フィス ブリュット プルミエ・クリュ グラン・レゼルヴ」です。このシャンパーニュは、木苺やラズベリーの微かな酸味と夏の完熟メロンを思わせる豊かな甘みを放ち、なぜか幼少期の通園路で感じた甘美な香りと重なり合います。20年ぶりに再会する互いの緊張を解きほぐし、懐かしい思い出話に花が咲いたのも、アペリティフのおかげでしょう。

久しぶりに再会する友人との食事には、わたしは必ずアペリティフを設けるようにしています。心の扉を開き、相手との距離を縮め、心理的な安心感をもたらすのがアペリティフの役割。みなさまも、旧友との再会を祝うために、夕食前にホテルのラウンジやリラックスできるバーなどでアペリティフを取り入れてみてはいかがでしょうか。

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テロワールが生み出す個性の豊かさ

シャンパーニュの世界では、ノンヴィンテージ、ヴィンテージ、プレステージュという三つの異なるランクが存在します。ノンヴィンテージは、異なる年のブドウを混合してつくられ、一貫した味わいを目指しています。ヴィンテージは、特定の年のぶどうのみを使用し、その年の気候やテロワールの特性を反映した独特な味わいを持っています。テロワールとは、気候や降水量、土壌、地形、標高など、ぶどう畑を取り巻く自然環境のことを意味します。プレステージュは、最高品質のぶどうと熟練の製法によって生み出される、各メゾンの頂点に位置するシャンパーニュといえます。

 

シャンパーニュの王様といわれる「ドン・ペリニヨン」は、ヴィンテージシャンパーニュのみを生産するという独自のポリシーを持ち、不作の年はリリースを見送るという妥協を許さない徹底した品質管理で知られています。

 

複雑で繊細な「ドン・ペリニヨン」の理解を深めるには、異なるヴィンテージを同時抜栓することが効果的です。変動の激しい気候下で育った2012年の「ドン・ペリニヨン」は、ぶどうがもたらす力強い味わいとコク深い果実味があり、一方安定した気候で成熟した2008年のそれは、洗練された香りと酸味と苦味と甘みのバランスが際立っています。2012年と2008年を比較することで、それぞれの年の気候がヴィンテージの香りや味わいにどのような影響を及ぼしているのかがよくわかります。

 

このように、垂直テイスティングというアプローチは、プレステージシャンパーニュの洞察を深めることに役立ちます。この手法は、ヴィンテージごとの「ドン・ペリニヨン」の個性を探求するうえできわめて重要であり、シャンパーニュの複雑さと奥深さをより深く理解することができるのです✨

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所有者の人柄がオールドヴィンテージに反映される

Mオールドヴィンテージワインは、まるで時代を超えて受け継がれるような〝文化遺産〟としての役割を担います。とくに、今回抜栓したシャトー・カロン・セギュールのヴィンテージは、90年以上もの時を経てなお、経験豊かなソムリエさえも驚嘆させるほどの素晴らしい状態。その滑らかで深みのある味わい、優雅な香りは、まさに極上のベルベットのようでした。

希少性が高く、とても貴重なワインが今宵のレストランにもたらされたのは、かつてこの店を愛した常連客の遺品としてだそうです。ワインの「熟成」に魅了された彼は、ワインと誠実に向き合い、ワインと毎日〝対話する〟ワインコレクターとして知られていました。その彼が愛してやまない1933年のシャトー・カロン・セギュールは、瓶を丁寧にラップで保護し、新聞紙で光から守り、最適な温度(約13度)と湿度(約70%)を保つ地下セラーで、長い年月をかけて大切に保存されていたといいます。モノの本質を理解し、モノを大切にする姿勢は、おのずと人への優しさへとつながります。

優しく、力強い味わい「シャトー・カロン・セギュール1933」を通して、故人の人柄とその生き方に触れたような気がします。もし前オーナーが健在で、今このワインを飲んだら彼はどのようなコメントを発したのだろうかと想像を膨らませながら、今夜はエゾ鹿との絶妙なマリアージュを楽しんでいます🍽️✨

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飲み頃の見極めの重要性

若いヴィンテージのファーストラベルとサードラベルの比較を通じて、ワインの奥深さと多面性、複雑性、そして飲み頃の重要性にあらためて気づくことができます。

 

ファーストラベルとは、「造り手の顔」ともいえるワインであり、「最高品質」を意味します。いわずと知れた「サッシカイア」はファーストラベルのワインであり、ラインナップのなかでも最高級の価格帯となります。セカンドラベルの魅力は、ファーストラベルで使用されなかったぶどうなどを使って、造り手の製造スタイルはそのまま活かされながらも、価格帯はファーストラベルより抑えられる点です。さらにセカンドラベルよりも価格帯が抑えられ、「親しみやすく、気軽に楽しめる」というコンセプトがサードラベルのポジションです。

 

ワインの初心者は、サードラベルよりもセカンドラベル、セカンドラベルよりもファーストラベルのほうが「おいしい」と思うのではないでしょうか。

 

実は、そう単純な話でもないのがワインの奥深いところでもあります。もちろん、おいしいかどうかは個人の嗜好性の問題でもあるため、一概にはいいきれませんが、とりわけファーストラベルの場合「飲み頃」というファクターがおいしさの決め手になるといってもよいでしょう。

 

長期熟成を前提としているファーストラベルは、飲み頃の見極めがきわめてむずかしいことが難点です。もともと何年・何十年と寝かせて味わいを楽しむのがファーストラベルの醍醐味といえるからです。ここが、飲み手の力量やセンスが問われるといわれる所以です。

 

実際に飲み比べると、ファーストラベルの「サッシカイア2018」よりもサードラベルの「テヌータ サン グイド レ ディフェーゼ2018」のほうが、はるかに芳醇な香りが広がり、まるみがあって、ふくよかで、こなれた味わいだったため、断然おいしく感じられました。

 

デカンタージュしても、また時間が経っても、なかなか「サッシカイア2018」を〝開花〟させることができず、最後まで「硬い」ままでした。若いヴィンテージではそのポテンシャルが完全に発揮されないことを学んだのです。ワインの味わいとは、単に年代や格付け、名声によるものではなく、飲むタイミングや熟成の度合いによって大きく変わる、という真理に、あらためてハッと気づかされた次第です。飲み頃の見極めがワインを楽しむうえでいかに重要か。次回は、数十年と寝かせたオールドヴィンテージの「サッシカイア」でリベンジを図りたいと思っています。

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鮨+粋=江戸前鮨

「鮨」とは、もともとは魚を保存する方法として発展した日本独自の食文化です。新鮮な魚介類をシャリ(鮨に使用される酢飯)の上にのせるこのシンプルな料理は、時間とともにさまざまなスタイルに広がり、とりわけ江戸(現在の東京)で独自の発展を遂げました。


一方「粋(いき)」とは、洗練された立ち居ふるまいのこと。そんな〝かっこよさ〟は、江戸前鮨の中にも色濃く反映されています。たとえば、アジやコハダといった一見平凡にみえる魚も、「粋」な鮨職人の手にかかれば、その魅力は最大限に引き出され、芸術作品ともいえる鮨へと昇華します。


そんな江戸前鮨のなかでも特に印象的だったのが、ガリを大葉で包み、シャリ、塩のみでしめたイワシ、昆布とともに巻き上げた逸品です。この至極に合わせたのは、「ギボラ・プリスム17」というブラン・ド・ブラン。このシャンパーニュは強烈なフレッシュ感があるにもかかわらず、果実味はリッチでボリューミー。イワシを重層的に包み込み、ほのかな甘味と少し苦味のある柑橘系のさわやかな香りが鼻から抜けるような、鮮烈で心地よい体験を味わせてくれます。


江戸前鮨は、そのつくる工程一つひとつに「粋」な心遣いが込められています。シャリの一粒一粒に至るまで、最高の食感と味わいを追求し、ネタの魅力を最大限に引き出すために、職人は創意工夫を凝らします。これは、素材の本質を理解し、それを最大限に活かすという、「粋」な美意識のあらわれでしょう。


日本の食文化の中心に位置する鮨と、その背景に流れる「粋」という美意識が融合した結果が「江戸前鮨」。この方程式が示す深い文化的な意味を探りながら、イワシの鮨ダネにグラン・クリュのシャルドネのみでつくられる「ギボラ」を合わせたのも、また〝粋な楽しみ方である〟と今夜も自己陶酔にふけっています🥂✨

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旨いは元にあり

「旨いは元にあり」。旨い鮨屋を決定づける要素です。わたしが尊敬する鮨屋の大将は、妥協のない食材探究に労を惜しみません。

漁港で水揚げされた魚を眺め、市場での競りを通じて、その日の最高の一品を見極めます。たとえば、金目鯛なら静岡県下田港数の子なら北海道留萌市といった産地を彼は自ら訪れます。また、米農家との深い繋がりも持ち、寿司に最適なシャリ用の米を選び抜きます。

いうまでもなく、どんなに優れた職人技術や調理設備を持っていたとしても、食材の鮮度や品質が悪ければ、旨い鮨は握れません。どこでどのように育ち、どのように扱われたかによって魚の品質は決まります。だからこそ、定期的に漁港や市場、米農家を訪ねる鮨屋を、わたしは信用しています。

シャンパーニュ生産者も、おなじです。モンターニュ・ド・ランスのプルミエ・クリュとグラン・クリュのぶどうを厳選し、最高品質のぶどうに徹底的にこだわるのが、「パルメ」という新進気鋭の造り手です。ひとくち飲むと、そのクオリティの高さがわかります。白もロゼも、深い味わいと複雑性を持ちながらも、エレガントな泡立ちと長い余韻がいつまでも続くのは、一貫して「旨いは元にあり」を追求した成果といえるでしょう。

旨い鮨屋を見分けるためには、食材へのこだわりを見極めること。店の外観や内装よりも、どのように食材を選び、どのようにその食材を大切にしているかを洞察することが大切です。「旨いは元にあり」は、食材の鮮度や品質が旨さを決定づけるという、鮨屋の核心を突くものです。鮨大将の目利き、食材に対する熱い思い、そしてその食材を通じて伝えられる物語に注目すれば、間違いなく旨い鮨屋を見つけることができるのです。

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香りにこだわる結婚祝い

友人の結婚祝いになにをプレゼントするか。みなさまも頭を悩まされたことはないでしょうか。わたしが意識しているのは「香り」です。事前にリサーチしておき、新郎新婦が好きな香りのする贈り物を選ぶことを心がけています。

ふたりとも〝森のなかの若葉の香り〟が好みということでしたので、今回わたしがチョイスしたのは、熱帯アフリカ原産のクワ科の観葉植物「ウンベラータ」と、白ぶどうのシャルドネのみでつくられたブラン・ド・ブラン「L&K HUIBAN Brut Blanc de Blancs」。不思議なほど、両者はとても香りが似ているからです。

ウンベラータの葉は大きなハート型が特徴で、その葉に鼻を近づけると、フレッシュで新緑の香りがします。一方「L&K ウイバン ブラン ド ブラン」もまた、その繊細な泡立ちとともに、さわやかで洗練されたグリーンの香りが漂います。

観葉植物もシャンパーニュも、新郎新婦のこれからの人生に華やかさと高揚感を与えてくれる存在です。ウンベラータの葉から漂う自然なグリーンの香りと、シャンパーニュの泡が放つ新芽のような香りが、おふたりの新しい生活を美しく彩ることを心から願っています🌱🥂✨
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