未知なるマリアージュの世界へようこそ!

私の超オススメワインをご紹介します🥂🍷✨

NVシャンパーニュの〝粋な〟楽しみ方 その4

🍾熟成味のヴィンテージ・シャンパーニュに対し、フレッシュ味のNV(ノン・ヴィンテージ)シャンパーニュ。長期の耐久性はありませんが、ほんの数年を経ていささか熟成したものも乙な味わいです。

 

《ジャカール/モザイク・ブリュット》の旧エチケット品もその一例。〝旧〟とはいえ、2020年1月末まで国内流通していたもの。現行の新エチケット品とくらべると色、香り、味わい、微差ながらその差異を感じます。

 

淡いイエローゴールドの現行品。勢いよく立ちのぼる、きめ細やかな泡柑橘、はちみつ、フローラルがほのかに香ります。レモンやグレープフルーツを想わせる、エッジのきいた酸と苦味で、全体的にひきしまった味わい。対して、わずかに濃い色の旧エチケット品。泡の勢いや質感は現行品とほぼおなじですが、香りはとりわけ芳烈。熟れたりんご、酵母、ロースト、焦げ香が抜栓直後からひろがります。フルーティーですこし甘みを感じる味わいは、丸みがありふくよかな印象。

 

焼き穴子や煮穴子のように、同じ食材でも調理法の異なる鮨ダネとあわせれば、よりいっそう楽しむことができます。おすすめはフレッシュな酸味の現行品に「生ウニ」、ほのかな甘みと芳ばしさの旧品には「炙りウニ」。《ジャカール/モザイク・ブリュット》のわずかな熟成差が、それぞれの濃厚なウニの旨味と磯の香りを最大限に引き立ててくれるのです。

 

エチケットの変更時期を事前に把握することは困難ですが、切り替わった直後なら新・旧ともに流通している可能性があります。飲み比べができる機会があれば、ぜひお試しください🥂✨

f:id:hrm628:20201115041203j:image

 

NVシャンパーニュの〝粋な〟楽しみ方 その3

赤ワインを混ぜてつくる〝ブレンド法のロゼ・シャンパーニュ〟。透明なワインにするために、澱(おり)を沈殿させる〝動瓶台〟。単一年のぶどうでつくる〝ヴィンテージ・シャンパーニュ〟。いまではどれも取り沙汰されることのない、シャンパーニュ界の常識です。

 

じつはこれらすべてが、あるひとりの女性により生み出されたものだということをご存知でしょうか。その名はずばり、「マダム・クリコ」。女性の社会進出など極めて稀であった1772年。弱冠27歳だった彼女は夫の急死により、メゾンを引き継ぐ決心をします。情熱と創造力にあふれ、シャンパーニュの新たな魅力を世界にひろめました。現代のビジネス・ウーマンの先駆けともなったひとりです。

 

今回の飲み比べは《ヴーヴ・クリコ》の象徴ともいえる、《イエローラベル》の新・旧エチケット。シャンパーニュにあまり馴染みのない方でも、この斬新なオレンジカラーのボトルに見覚えがあるのではないでしょうか。

現在リリース中のイエローラベルは、淡いレモンイエローの輝きと繊細でクリーミーな泡。酵母の香りと熟れた桃やリンゴの芳香が漂います。味わいは力づよさがありつつも、丸みとまろやかさの方がまさる印象。一方、淡いゴールドカラーを呈する旧エチケット品。しっかり焦げた焙煎香と、熟成特有の芳醇な香りが混在しています。泡はいまだエネルギッシュで、厚みとコク、余韻の長さがとりわけ顕著。経年変化でむしろ、〝力づよさ〟が増したよう。凛々しいマダム・クリコの姿を彷彿とさせる一本です。両者に合わせた鮨ダネは、北方四島国後島)産のエゾバフンウニ。これから冬にかけてが旬である北方四島産は、北海道産に負けない濃厚な甘味が魅力です。まろみある現行《エイローラベル》にも、力づよい旧エチケット品にも、極めてよく合う鮨ダネ。かなうならば、ぜひ〝板ウニ〟でご堪能いただきたい🥂✨

f:id:hrm628:20201110042616j:image

 

NVシャンパーニュの〝粋な〟楽しみ方 その2

収穫年や生産年の表記がないNV(ノン・ヴィンテージ)シャンパーニュ。基本的にはフレッシュな味を楽しむもの。メゾンも購入してすぐの抜栓を推奨しています。ところが、なかには数年おいておくことで、その味わいが劇的に昇華するすばらしいNVがあります。

 

そんな粋な楽しみ方をさせてくれるメゾンのひとつが《ランソン》。一般的な醸造工程である「マロラクティック発酵」を、あえて行わない生産者としても有名です。リンゴ酸が乳酸に変化するのがマロラクティック発酵。その工程をふまないワインは、リンゴ酸特有のするどい酸味を呈します。このエッジのきいた〝酸〟こそが、ランソンの抜群のフレッシュさと力づよさの基になっているのです。

 

ランソンの顔というべく《ブラック・ラベル》もしかり。とりわけ酸が印象的で現行品のフレッシュさをより一層助長します。あわせて鮨をいただくなら、本マグロの「大トロ」を。濃厚な脂の甘みを引き立てつつ、シャープな酸がさわやかな余韻へと導きます。対して、およそ経年5年の旧エチケット品。活力を維持しつつも、色に深み、香りに芳醇さ、味わいには底知れぬ奥ゆきが生まれています。〝ヴィンテージ・シャンパーニュ〟といわれても、疑わないほどのおいしさ。こちらは本マグロの「赤身」と。独特の鉄ぽっい旨味が、より力づよく感じる組み合わせです。

 

ランソンは約5年ごとにエチケットを変更します。2015年につづき、直近の変更は2020年夏。日本には来年、新エチケット品が届きます。ぜひ、現在流通している《ブラック・ラベル》を購入し、数年後に現行品と飲み比べてみてくださいね🥂✨

f:id:hrm628:20201105041858j:image

 

NVシャンパーニュの〝粋な〟楽しみ方 その1

NV(ノン・ヴィンテージ)シャンパーニュとは、複数年のワインがブレンドされたもの。単一年のヴィンテージ・シャンパーニュとは異なり、エチケット(ラベル)に年号の記載はありません。ただ、年号記載がなくても〝エチケットデザイン〟からおおよその生産時期がよみとれる場合があります。

 

たとえば《テタンジェ》の《ブリュット・レゼルヴ》。今回の飲み比べは、現行品とひとつ前のエチケット。テタンジェは2015年にデザインを変更したので、少なくとも5年の熟成差となります。泡が勢いよく立ちのぼるのが現行品。フレッシュな柑橘、ハチミツ、ブリオッシュ香が広がります。溌剌とした酸と、グレープフルーツの皮を想わせるするどい苦みが印象的。一方、旧エチケット品はやわらかく緻密でクリーミーな泡。芳ばしいロースト香と複雑な熟成香が渦巻いています。酸も苦みまるみを帯び、深みある甘味が余韻ながく続くのです。あわせた鮨ダネは「生ホタテ」。現行品は塩とレモンで、旧品はさっと炙って芳ばしさと甘みを増幅させた方が好相性です。

 

基本的にNVはフレッシュな味わい楽しむもの。ただ、なかにはテタンジェのようにすばらしい熟成過程を経るものもあります。そんなNVシャンパーニュに出会った際は、ぜひエチケットのデザインを経年数の指標にしてみてくださいね🥂✨

f:id:hrm628:20201030042534j:image

 

鮨夜の楽しみ方

「プレリュード(前奏曲)」や「エチュード(練習曲)」など、ピアノではおなじみの曲名です。これらは性格的小品といい、シャンパーニュ《テタンジェ》が名づける「ノクターン夜想曲)」もそのひとつです。

 

残糖量が17.5g/lと、一般的な辛口シャンパン(12g/l未満)より多い《ノクターン・セック》。まろやかかつ甘やかな風味が、しっとりとした夜を連想させます。そんなノクターンは、関西のシャリが甘めの鮨によく合います。なかでも〝トロたく〟は、トロとたくあんの甘みも重なり、ひときわ甘美なマリアージュを奏でます。

 

握りの合間に〝ねぎトロ〟と《ブリュット・レゼルヴ》を合わせ、くちのなかをリフレッシュ。そして最後は〝トロたく〟と《ノクターン》で〆る。これがわたし流、鮨夜の楽しみ方です🍣💫🥂

 

f:id:hrm628:20201025045422j:image

 

鮨とシャンパーニュの前奏曲

ショパン24の前奏曲。叙情的な旋律の「雨だれ」や、胃腸薬のCMでおなじみの「7番イ長調」などがとりわけ有名です。本来、前奏曲(プレリュード)とは大曲の前に演奏される小規模な楽曲のこと。それがのちに、即興性の強い独立した曲をさすようになります。いまでは、〝モノゴトのはじまり〟のたとえにも用いられます。

 

老舗メゾン《テタンジェ》の《プレリュード・グラン・クリュ》も、まさに〝はじまり〟を意味するシャンパーニュ。2000年のニューミレニアムを機に誕生した銘柄です。特級畑のシャルドネピノ・ノワールが半量ずつブレンドされた、プレリュード。シャルドネの繊細さとピノ・ノワールの力づよさをあわせもち、5年の瓶内熟成がもたらす複雑味がその美味に拍車をかけます。レモンイエローの輝きと、緻密でクリーミーな泡。酵母としっかりと焦げたロースト香が豊かに香ります。そんなプレリュードに合わせるべく鮨ダネは、脂ののった「金目鯛の炙り」。皮目を炙ることで、もっとも美味とされる身と皮の間の脂がとけだし、その濃厚な旨味をシャンパーニュが包み込みます。すると繊細なミネラルと爽やかな柑橘香も相まって、脂の甘みをより鮮烈に感じるのです。対して、テタンジェの代表格《ブリュット・レゼルヴ》と「真鯛」は、エレガントな旨味が引き立つ組み合わせ。同時に比較すると、双方のコントラストが体感できオススメです。

 

テタンジェ曰く「このシャンパーニュアペリティフ(食前酒)に適しているうえ、シーフード料理との相性がよい」とのこと。ぜひ、鮨の前に供されるアテからプレリュードを抜栓し、〝鮨シャン前奏曲〟をお楽しみください🎹🥂✨

f:id:hrm628:20201020041223j:image

鮨屋で学ぶ漢字の由来

「螺旋(らせん)」とは、巻き貝のように立体的に渦巻いている状態のことをいいます。この〝螺〟という漢字、訓読みは〝つぶ〟。鮨ダネの定番であるつぶ貝の〝つぶ〟です。

 

螺(つぶ)貝は、「あさり」や「ほたて」のように特定の貝をさす名称ではありません。ある一定種の〝巻き貝〟、全体をさす総称。「つぶ貝」とオーダーしても、色や大きさ、風味などがその時々で異なるのはこのためです。とはいえ、共通する特徴も。サクサクとした食感で、ほんのり甘く淡泊な旨味が魅了です。塩とスダチであっさりいただくのも美味。

 

そんなつぶ貝の鮨には《ジャカール/モザイク・ブリュット》がよく合います。つぶ貝と同様ほんのり甘みを感じる、辛口のシャンパーニュです。レモンやグレープフルーツが爽やかに香り、エッジのきいた苦味で、つぶ貝の淡泊なおいしさを引き立てます。

 

鮨屋でつぶ貝と対照的な貝といえば、煮蛤(はまぐり)。ふっくら柔らかく、つよい旨味が特徴です。甘辛タレでいただく濃厚な鮨は、凝縮感ある果実味の《モザイク・ロゼ・ブリュト》が相性抜群。

 

つぶ貝だけでなく、魚介をあらわす漢字にはユニークなものが多数。師走のころにもっとも脂がのる〝鰤(ぶり)〟のように、味の特徴をあらわした漢字はワイン選びのヒントになるかもしれませんね。

f:id:hrm628:20201015041818j:image