未知なるマリアージュの世界へようこそ!

私の超オススメワインをご紹介します🥂🍷✨

「こだわり」と「柔軟性」

フレッシュな果実味と独特なミネラル感が魅力の「シャブリ」。かつては他のワイン同様、木樽で発酵・熟成がおこなわれていました。ところが1970年代、ステンレスタンクの登場で状況は一変。ステンレスタンクはメンテナンスの容易さだけでなく、シャブリ最大の魅力であるフレッシュ感とミネラル感の温存、という革新的なメリットをもたらしたのです。

 

現在はステンレスタンクが圧倒的多数。そんななか、今回の《サミュエル・ビロー》は、〝ステンレス・シャブリ〟と〝樽シャブリ〟、双方のラインナップを楽しむことができます。おなじグラン・クリュでも、畑ごとのテロワールを見極め、ステンレスと樽を巧みに使いわけるのが《サミュエル・ビロー》流。《レ・プリューズ2015》は樽、《レ・クロ2015》はステンレスタンクを使用します。前者は、ハニーアーモンドのような甘く芳ばしい香り。とろみすら感じる濃密な果実味とみごとに調和しています。一方後者は、レモンをしぼったかのようなフレッシュな柑橘香と、エッジのきいた酸。力づよいシャルドネの旨味がひきたちます。両者に共通するのは、グラン・クリュならではの圧倒的な凝縮感。噛むほどに旨味あふれる「極上フィレステーキ」と、合わないわけはありません。

 

伝統を重んじる「こだわり」と、時流にあわせる「柔軟性」。進化し続けるためには共存が不可欠であり、そのバランスが個性を生むのではないでしょうか🍷🥂✨

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「アイデンティティ」とはなにか

生産者の特徴を知るには、おなじ生産者のラインナップを多く試すことがオススメ。どの銘柄にも共通のアイデンティティを感じるはずです。「アイデンティティ」とは、唯一無二の独自性を確立する要素。つまり、そのつくり手〝らしさ〟をあらわします。

 

たとえば、コート・デ・ブランのシャルドネがメゾンの象徴である《テタンジェ》。各銘柄、共通してエレガントなフィネスを感じます。なかでも瑞々しく繊細な《ブリュット・レゼルブ》は「貝割れ」の辛みを引き立て、なめらかな果実味の《プレスティージュ・ロゼ》は、とろける甘さの「中トロ」によく合います。

 

ビールもしかり。「キリン派」「アサヒ派」等とわかれるのは、つくり手のアイデンティティに惹かれるからでしょう。アイデンティティは、嗜好の〝みちしるべ〟といえそうです🍷🍺

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グラスフェッド・ビーフ

健康志向のたかまりもあり、昨今とりわけ注目を集めている「グラスフェッド・ビーフ」。オーストラリアやニュージーランドなど、広大な土地で牧草をたべてそだつ牛肉です。一般的な穀物飼育にくらべ脂肪がすくなく、さっぱりとした上品なうま味が特徴。

 

開放感あふれる青空のもとでバーベキュー。赤身ステーキには、ジュヴレ・シャンベルタンがわたしの定番。しかしきょうはグラスフェッド・ビーフに合わせて、より女性的といわれるシャンボール・ミュジニーを抜栓します。《ドメーヌ・クリスチャン・クレルジェ/シャンボール・ミュジニー 1erクリュ〝レ・シャルム〟2013》は、メゾン自身もたかく評価する秀逸ヴィンテージ。濃厚かつ鮮烈な赤紫色に、チョコやカシスのリキュールといったきわめて濃密な香り。そして、その色香から想像するとおり、完熟プルーンのような極上の甘味。耐久予測(6-10年)をはるかに超えるポテンシャルで、〝サンテミリオングランクリュ〟に勝るとも劣らない凝縮感です。複雑味と奥ゆきの増したシャンボール・ミュジニーが交わると、グラスフェッド・ビーフ特有の〝草〟の香りがほのかに口のなかに広がります。

 

せっかくの良質な肉も、〝解凍方法〟をあやまってはもともこもありません。塊肉であれば冷蔵庫で2日間かけ、ゆっくり解凍することをおすすめします🍷✨

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鳥肉の概念をくつがえす〝オーストリッチ〟

外観では識別しかねるほど類似する「牛肉」と「オーストリッチ肉」。その相違点は〝脂肪量〟にあります。おなじ赤身のモモを比較すると、牛は100g中20.7g。対してオーストリッチはわずか2.5gの含有量。

 

きわめて低脂肪なオーストリッチ。フィレ肉であらためてそれを実感します。生は牛フィレをしのぐやわらかさ。もっちりとした塊肉は、トングで挟むことすら困難です。それがローストすると一変。ミディアム・レアに仕上げても脂肪の少なさゆえ、硬くひきしまったステーキに。噛むほどに〝肉々しい〟旨味があふれ、まるで牛モモ肉を頬張っているかのようです。

そんなオーストリッチのフィレ・ステーキには、赤身肉の定番《ジュヴレ・シャンベルタン》。今回は《ドメーヌ・ド・ミュテル》の《2016》を抜栓します。すこし褪色(たいしょく)しかけたルビー色に、鉄っぽい生肉の香りと乳系発酵香。秀逸な熟成ブルゴーニュをまさに物語る色香です。味わいはジュヴレ・シャンベルタンの力づよさを秘めつつ、シルキーかつエレガントな印象。にんにく醤油で風味の増した肉の旨味を引き立てます。塊肉のしっかり焼けた部分は、さらに凝縮感ある味わい。芳ばしいロースト香と抜群の厚み、《ルイ・ブラン》が実によく合います。

 

オーストリッチは100%赤身のたいへん稀有な鳥類。鳥にありがちな独特の香りもまったく感じさせません。鳥肉の概念をくつがえす〝オーストリッチ〟。ぜひ一度お試しくださいね🍷✨

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究極の赤身肉

脂肪がすくなく、やわらかな身質が特徴の「ヒレ肉」。一頭分の肉のうち、わずか3%ほどの稀少部位。細長く、鰹節のように、片方が細まった形状をしています。ヒレのなかでもとくに稀少部位として有名な「シャトーブリアン」は、この中腹あたり。ほどよくサシが入り、やわらかさは別格。そんなシャトーブリアンをしのぐ稀少な部位が、幸運にも今回入手できた「トゥルヌド」と呼ばれるヒレ肉です。細くなる先端により近い部位で、脂身をほとんど含まないのが特徴。正真正銘の赤身肉。濃厚な旨味が牛肉の力づよさをあらためて感じさせます。

 

そんなトゥルヌドには、飲み頃をむかえたブルゴーニュ《ジュヴレ・シャンベルタン》がおすすめ。ワインの力づよさと、トゥルヌドの旨味の強さがみごとに調和するからです。力づよいといえど、赤身の繊細な旨味。ボルドーではワインが強すぎてしまいます。今夜の《フェヴレ/ヴィエイユ・ヴィーニュ2015》は、メゾンが推奨する熟成期間が4-6年と、まさにピークをむかえる一本。濃厚かつ鮮やかな赤紫色に、カシスのリキュール、丁字スパイシス、なめし皮の香り。絹のようなエレガントな熟成味が舌を滑り、パワフルな旨味が底から沸き上ってくるかのよう。直火と蒸らしでミディアムレアに焼かれたトゥルヌドは、噛むたびに旨味があふれ、ジュヴレ・シャンベルタンがそれを包み込むかのようにシルクのベールをひろげます。

 

究極の赤身肉、トゥルヌド。まずはシンプルな味つけで、肉本来の旨味をご堪能いただきたい。ワインに合うおすすめの調味料は、粗挽きの岩塩・胡椒、レモン汁、ワサビ、フライドガーリック。「トゥルヌド」に遭遇された際は、ぜひお試しくださいね🥩🍋✨

 

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鮨屋の愉しみ方

タイ、マグロ、ウナギ。養殖技術が発達し、いまでは養殖ものが天然におとらない逸品。そんななか、〝天然もの〟しか存在しない鮨ダネも。その代表格がウニ。研究されてはいるものの、いまだ未知なる部分が多く、養殖技術が確立していないのが現状です。ベールに包まれた、魅惑のウニ。それを贅沢にも〝板ウニ〟でいただくのがわたし流鮨屋の愉しみ方です。

 

なかでも、とろりとした食感と甘味が魅力の「バフンウニ」。今夜は、老舗メゾン《テタンジェ》とともにいただきます。まずはメゾンの顔というべく《ブリュット・レゼルヴ》。35区画のぶどうがブレンドされたNVは、シャンパーニュ屈指のバランスの良さが魅力。瑞々しいグレープフルーツに、やわらかなイースト香。シャルドネの繊細なフィネスが、エレガントな女性を彷彿とさせます。緻密でクリーミーな泡がバフンウニと融合し、濃厚な甘味を舌に分厚く、纏わせてくれるのです。対して《レ・フォーリ・ド・ラ・マリケットリー》は単一畑のNV。テタンジェがはじめてリリースした、記念すべきキュヴェです。歴史をさかのぼること1932年。〝マルケットリー城〟とその周囲にひろがるぶどう畑〝レ・フォーリ〟をピエール・シャルル・テタンジェが購入し、テタンジェのシャンパーニュづくりがはじまります。いわば、メゾンの原点。香りは白桃の甘い果実香に、トーストやローストナッツの鮮烈かつ力づよい芳香。深みあるコクと独特の苦味も相まって、男性的な印象です。驚くほど大きな泡、エネルギーあふれる荒々しさ。「微調整せず、ありのままで勝負する」という、テタンジェの並々ならぬ心意気を感じます。バフンウニと交わると勢いある泡で磯の香りが炸裂し、さわやかな甘味がくちいっぱいにひろがります。

 

カウンターのネタケースを眺めつつ、いただく肴や鮨を思案するのも至福のひととき。そこに板ウニが積んであれば、絶好のチャンス。〝裏メニュー〟で出してもらえないか、大将に交渉する価値、大いにありです🥂✨

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白にもロゼにも合う「棒寿司」

シャンパーニュの白とロゼ、どちらにも合う寿司があります。それは「サバの棒寿司」。かつて保存技術が未発達のころ、若狭湾から京都へつづく、通称「サバ街道」かいわいで盛んに作られていた郷土料理です。

 

握りにくらべ、シャリを多くつかう棒寿司。〝タネ〟と〝シャリ〟とのバランスがとても重要です。それゆえ棒寿司に仕立てるサバは、鮮度はもちろんのこと、脂のノリと身の厚みが必須。そんな逸材を砂糖・塩・酢でしめ、シャリとあわせて巻きあげます。白のシャンパーニュであれば爽やかな酸味がひきたち、ロゼなら優しい甘味が増長するのです。

 

今回は、フレッシュ・エレンガンス・バランスの三拍子そろった《ローラン・ペリエ》。淡いゴールドカラーの《ラ・キュヴェ》は、食パン酵母にレンモをおもわせる柑橘香。キレある酸の、きわめてドライな辛口。今夜いただく極厚サバにぴったりです。大間鮪のトロをもしのぐ脂ののり。隠し味の胡麻と大葉も相まって、ラ・キュヴェが濃厚かつ爽快なサバ寿司に昇華させるのです。一方、ひときわ目をひくブラッド・オレンジカラーは《キュヴェ・ロゼ》。たいへん稀有な、セニエ法によるロゼ・シャンパーニュです。通常、ロゼ・シャンパーニュは白ワインに赤ワインを混ぜる、ブレンド法が一般的。対してセニエ法は、黒ぶどうを果皮・種子ともに醸し、圧搾。そのしぼり果汁でシャンパーニュをつくります。ゆえに濃い色調を呈し、もぎたてのフレッシュベリーを彷彿させる味わいに。サバのまろみが倍増し、濃厚な甘味を果てなく堪能することができます。

 

季節によって、脂ののりが大きくことなるサバ。お好みでシャンパーニュの温度を変えて楽しむのもひとつ。わたしは脂ののった旬のサバを、より甘くいただきたので、シャンパーニュは10-12度と高めに設定。さっぱり召し上がりたい方は、5-7度の低めの温度をおすすめします🥂✨

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