ワイン界の第一人者といえば、世界のソムリエこと、田崎眞也氏。この《club des 50(クラブ デ サンカント)》というワインは、田崎氏がボルドーの格付けシャトーのファーストラベルとセカンドラベルをブレンドしてつくられるワインです。
〝ファーストラベル〟というは、シャトーの顔というべく、フラッグシップワイン。最上級のぶどうと醸造方法により超極上ワインがつくられます。
一方、〝セカンドラベル〟というのはぶどうの品質もふくめ、ファーストラベルにまで及ばなかったものです。
それを混ぜてしまおうとは...。
なんとも大胆な発想でしょうか。
それだけでなく、このワインは許された特別な50名だけに提供されるもの。転売禁止のため、市場に出回ることはなく、たいへん貴重なワインです。
味わい最大の特徴は、ファーストとセカンドを50%ずつブレンドしているとだけあって、早い時期からいただけるだけでなく、抜栓まもなく、ひいては口に含むとたちまち、格付けシャトーのピークに近い味わいを楽しめる点です。
今回は《クラブ デ 50》の《サン・ジュリアン2009》をいただきました。
ボルドー地方の〝サン・ジュリアン〟は、がっしりとした男性的ワインがうまれる〝ポイヤック〟と、ふくよかで優美な女性的ワインがうまれる〝マルゴー〟に挟まれて位置します。酸や果実味、タンニンのいずれもその双方の中間的なバランスをたもち、力づよくも、柔らかくまるみのあるワインです。
そんなサン・ジュリアンにお肉を合わせるなら、赤身派の私は〝マルシン〟がオススメ。
〝マルシン〟はヘルシーなもも肉の中心部(芯丸)で、シャトーブリアン同様、一頭からわずかしかとれない稀少な部位です。
〝もも肉〟ときくと、純粋な赤身肉を想像しがちですが、この〝マルシン〟は赤身だけでなく、きめ細やかなサシ(霜降り)がうっすら入っているのが特徴です。身質はとても柔らかく、赤身の旨みと脂のコクの絶妙なバランスが、サン・ジュリアンの味わいバランスと近きものを感じます。
《クラブ デ 50》の〝速攻性〟に合わせ、マルシンを〝しっかりめ〟に焼くことで、赤身と脂の旨みがひとつとなり、マルシンも口に入れた瞬間にその最高潮を味わえます。
しっかり焼けた脂と備長炭の芳ばしさが食欲をそそり、《クラブ デ 50/サン・ジュリアン 2009》のカシスソースを煮詰めた濃厚な香り、黒こしょう&丁子のスパイシー香ともとてもよく合います。
旨み・コクが一体となったマルシンと、シャープなタンニンとまろやかな果実味が開いた《クラブ デ 50》は、まるで〝極うまループ〟を描くかのように、互いが互いを高めあいながら、私の舌を魅了するのでした。
それにしても、世界にはほんとうにさまざまなワインが存在します。ゲーテが残した「つまらないワインを飲むには、人生はあまりにも短すぎる」という言葉を考えさせられる今日このごろです。