未知なるマリアージュの世界へようこそ!

私の超オススメワインをご紹介します🥂🍷✨

不思議な〝泡〟

「ティラージュ」とは〝瓶詰め〟を意味するシャンパーニュ用語。できあがったシャンパーニュを瓶に詰めるのではなく、一次発酵をおえた非発泡のワインを瓶に詰める工程です。その際「リキュール・ド・ティラージュ」という、酵母酵母のエサとなる糖分をふくむリキュールを添加。すると、密閉された瓶内でふたたびアルコール発酵(二酸化炭素の発生)がおこり、発泡性のワインに仕上がるのです。

 

わたしのお気に入りメゾン《ゴテロ》の特徴は、なんといっても、この〝泡〟の質感。グラスではか細くたちのぼる姿でも、くちに含んだとたん、きわめてクリーミーな泡と化し、舌全体を包み込むから驚きです。それは卵黄をかきたててつくる「サバイヨンソース」のように、柔らかでありつつ、たいへんリッチな味わいをももたらします。メゾン曰く「この泡を得るために、リキュール・ド・ティラージュの添加には、このうえない慎重さと綿密さ、そして経験の積み重ねが不可欠」。ゴテロは、糖分をふくむワインを4%、酵母を5%添加します。三世紀以上にわたる家族経営でこそ見出せた、〝黄金比〟なのでしょう。今回セレクトした《ブリュット・グラン・レゼルヴ》も例にもれない絶品泡。新鮮な「真鯛」の鮨に合わせると、細やかな泡が鯛の上品さを引きたて、熟成した「昆布じめ鯛」にはさらなる旨味を重ねます。

ゴテロ家の名は、王族につかえていた〝道化師〟に由来。繊細な見た目と異なる、躍動的な泡。まさに〝驚き〟を届けてくれるシャンパーニュです🍾✨

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わたしがワインに魅了される理由

ワインには「飲み頃」というものがあります。飲み頃とは、味と香りが〝ピーク〟に達する時期のこと。リリース後すぐに楽しめるワインもあれば、数十年かけてピークをむかえるワインもあります。

 

今回はそんな経年変化が楽しめるボルドー、《シャトー・ムーラン・ナヴァン1998》。存続するシャトーですが、1998年はかつての生産者による稀少なヴィンテージ。その色合いは、くすんだレンガ色でエッジには透明感。芳香はプルーンにカカオ。くわえて、腐葉土やなめし皮といった熟成香がかおります。経年によるひかえめな果実味、やわらかく繊細な酸、シルクのように滑らかなタンニンが一体化され、まさに〝いま〟が飲み頃。カベルネ由来の〝青っぽさ〟も相まって、バベットステーキの力づよい旨味がいっそう際立ちます。

 

どんなワインも最高のタイミングで抜栓したいもの。ピークに〝であった〟ときの感動は、筆舌に尽くしがたいものです。そんな千歳一隅の出会いこそ、わたしがワインに魅了される、いちばんの理由なのです🍷🥂✨

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シャサーニュ・モランッシェの赤

ブルゴーニュ「シャサーニュ・モランッシェ」村。いわずと知れた、白ワインの銘醸地です。しかし忘れてはならないのが、高品質な〝赤ワイン〟。かつては赤が白の生産量をうわまわっていたほど。秀逸なピノ・ノワールを生むテロワールは、いまなお健在です。

 

シャサーニュ・モランッシェの赤の特徴は、果実味、酸、渋みに富んでいる点。つまり、長期熟成にも耐えうる高いポテンシャル。《ベルナール・モレ2002》がそれを体現しています。色調は、すこし枯れ感があるものの、経年〝20年〟とはおもえない濃厚なレンガ色。香りは熟成感のある葉巻や獣香に、生肉を想わせる鉄分の香り。時間とともにシナモン、甘草、チョコといった甘い香りがきわだちます。抜栓直後の味わいは、収斂性のあるタンニン(渋み)がひときわ主張。それが一時間半で、酸・果実味とみごとに融和し、このうえなくまろやかな旨味を呈するのです。

 

この赤には、極上肉がよく合います。熊本のブランド牛「くまもと和王」はその最たる例。細やかなサシとまろやかな風味をもつ黒毛和牛。まろみを帯びたワインにとけこむように、芳醇な旨味が広がります。また、アメリカで育った「極黒牛」もオススメ。黒毛和牛の交雑品種で、和牛とアメリカンビーフ双方の魅力をあわせもちます。エレガントな熟成シャサーニュが、肉にそっと寄り添うように、力づよい旨味をひきたてます。

 

あいにく、ベルナール・モレは2006年ヴィンテージで引退。現在は、ふたりの息子「ヴァンサン・モレ」と「トマ・モレ」が、それぞれ《シャサーニュ・モランッシェ・ルージュ》を生産しています。彼らのワインは20年で、どんな変化をとげるのでしょう。興味はつきません🍇✨

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経年変化による魅力

ブレンド法によるロゼ。ヴィンテージ・シャンパーニュ。澱をとりのぞくための動瓶台。これらすべてを世に誕生させたマダム・クリコ。現在にいたるシャンパーニュ界の発展は、彼女なしには成し得なかったといっても過言ではありません。

 

そんな彼女へのオマージュ(敬意)でうまれたのが、《ラ・グランダム》。まさに〝偉大なる女性〟を冠したプレスティージュ・キュヴェは、数年にいちど生産されるヴーヴ・クリコの最高峰。

 

今回は、とりわけ貴重な1985年〝旧式〟ボトルを抜栓。現行ボトルに切り替わった時期で、新・旧双方のボトルが混在するレア・ヴィンテージ。くわえて、大寒波で甚大な霜被害をうけるも、屈指の収穫となった歴史的なグラン・ヴィンテージです。ピノ・ノワール63%、シャルドネ37%の《1985》は、36年でじつに美しいアンバーカラーに。熟成した酸の香りとブランデーをおもわせる甘美な芳香。気泡はほぼ感じられずも、いまだへたれず、しっかりと生きています。それは、きわめて美々しい味わい。かつては至極の力づよさであったであろう酸が、このうえなく繊細かつエレガントに経年変化しています。まるで、情熱にあふれるマダム・クリコの、歳を重ねた姿を垣間見るようです。

 

2010年7月、バルト海の沈没船から見つかった約170年前のヴーヴ・クリコ。世界最古とされるシャンパーニュは、はたして彼女のどんな魅力的な側面をみせてくれたのでしょうか🍾✨

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餃子の調理法にあわせて

餃子をシャンパーニュといただく〝ギョウシャン〟。おすすめはピノ・ノワールの含有率がたかいもの。しっかりとした骨格で、ジューシーな肉の旨味に負けない厚みとコクを呈するからです。

 

今回セレクトは《グルエ/ブリュット》。ピノ・ノワール80%、とギョウシャンには申し分ない味わいです。くわえて〝焦げ感〟を想わせるほどの芳ばしい樽香と苦味が特徴。こんがり焼けた「焼き餃子」と抜群の相性をみせます。口にふくむと勢いよく広がる旨味。あわせて餃子の旨さも拡張します。

 

ひとくちに「餃子」といっても、その調理方法はさまざま。焼き目が芳ばしい「焼き餃子」、もっちりとした皮を楽しむ「水餃子」、油のコクが格段とます「揚げ餃子」など。調理法に合わせてシャンパーニュをセレクトするのも、ギョウシャンの楽しみ方のひとつですね🥂🍾✨

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クレマンの魅力

シャンパーニュとおなじ、瓶内二次発酵でつくられる「クレマン」。フランスの8つの地域でのみ、生産がゆるされた発泡ワインです。その最大の魅力はバラエティゆたかな品種。シャンパーニュはおもにシャルドネピノ・ノワールピノ・ムニエであるのに対し、クレマンには、その地域の特徴ある様々な品種が使用されます。

 

なかでもお薦めが、ブルゴーニュの新星こと《マニュエル・オリビエ》のクレマン・ド・ブルゴーニュ。設立1990年にして、ワイン界に旋風を巻き起こす若手醸造家。彼のクレマンはシャルドネピノ・ノワールをベースに、ブルゴーニュの名産「アリゴテ」が25%ブレンドされています。淡いゴールドカラーに細やかな泡。甘い蜂蜜、芳ばしいロースト、フレッシュな柑橘香が広がります。アリゴテの溌剌とした酸、シャルドネの繊細なフィネス、ピノ・ノワールの厚みあるコク。じつにバランスのとれた味わいです。合わせる料理は「ムール貝の白ワイン蒸し」。レモンを絞ったかのような爽やかさを与え、ミネラル感が貝の旨味を増幅させます。添えられたイタリアンパセリと、クレマンの独特の苦味が料理をさらに引き立てます。

 

クレマンのなかには使用可能な品種が10を超えるものも。それゆえ、同じ〝クレマン・ド・○○(地方名)〟でも味わいはさまざまです。造り手の個性がひかるクレマン。お好みの一本をみつけてくださいね🥂✨

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音楽も料理も不思議

玉ねぎの歌(La chanson de l’oignon)。ナポレオン軍も歌っていた行進曲です。「油で揚げた玉ねぎが好き。玉ねぎはおいしいから好き」。勇ましく歌う軍人たちを想像すると、なんだか微笑ましく感じます。

 

そんな油で揚げた、オニオンリングに合わせるのはシャンパーニュ《カステルノー》。きらめくゴールカラーの《2003》は、カーヴ熟成15年。微細ながらも力づよく泡がたちのぼります。香りは酵母、ハチミツ、アプリコット、こんがり焼けたバターたっぷりのクロワッサン。味わいもきわめてリッチ。ピノ・ノワール(70%)の圧倒的な厚みと深みを、シャルドネ(30%)のエレガンスが引き立てます。オニオンリングの芳ばしい揚げ衣、油で甘みがました玉ねぎととても相性のよいペアリングです。

 

日本ではあまりなじみのない「玉ねぎの歌」。ところが、くりかえし歌われるサビが、童謡「クラリネットをこわしちゃった」のサビにそのまま転用されていると知ると、おのずと親近感がわいてきます。音楽も料理も不思議。オニオンリングに出会うたびに、この曲がわたしの頭に流れてきます🎼♪

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